幸友15
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環境エネルギー問題とこれからの産業 私が大学を卒業して社会に出た1970年頃、テレビなどのメディアは「石油が、あと40年でなくなる」と言っていました。私は物理を勉強していたこともあり、原子力の研究を始めたのですが、次第にこれはおかしいなと思うようになったのです。その頃読んだメドウズの『成長の限界』という本に、「人間には成長の限界がある。なぜなら地球は有限であり、有限の中からどんどん石油や石炭などを汲み出していったら、やがてなくなってしまう」と書かれていました。しかし、原文をよく読んでみると、「いま発見されている油田以外に油田が見つからない場合には」という断り書きがあったのです。つまり、地球は有限であり、石油を人間が使うことも事実ですが、もし仮に貯金のように1兆円分の資源があるとすれば、1年に1万円ずつ引き出したとしても1億年分あるという計算になります。 油田の寿命は、いま発見されている油田の容量に対し、今年の石油消費量を割った値。そうして割り出した数字が40になるため、石油の寿命は40年と言われています。ところが、1970年に40を足すと2010年。すでに石油はなくなっているはずなのに、みなさんはまだクルマに乗っています。一昨年、石油連盟が「石油の寿命は、あと43年」と発表しました。40年でなくなると言っていた寿命が、40年経ったら43年に。今から40年後の2050年になったら、数列からして46年でしょうか。石油を採掘している会社は、100年以上も続いている世界的な大企業です。そして、石油を掘り始めるのには30年ほどの時間がかかります。発見されている石油が40年分ということは、実質10年しか余裕がありません。10年しか余裕がなくて、どうして商売ができるのでしょうか。もしも本当に残り40年だとしたら、大きな会社は資金力がありますから、油田を買い漁るはずです。それでも40年ということは、石油が眠っているということです。そこにある地球は有限。しかし…。「石油は、あと40年」 の真実。Profile昭和18年6月3日、東京都生まれ。昭和37年、都立西高等学校卒業・昭和41年、東京大学教養学部基礎科学科卒業。同年旭化成工業(株)に入社、昭和61年、同社ウラン濃縮研究所長、平成5年より芝浦工業大学工学部教授を経て、平成14年より名古屋大学大学院教授、平成19年より現職。[講師]中部大学 教授(所属/総合工学研究所) 武田 邦彦たけだ くにひこ第24期総会講演ダイジェスト 日時:2012年4月25日(水)16:50〜会場:名古屋東急ホテル3階37

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