幸友15
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 近年、深刻な被害が発生している集中豪雨による都市型水害。「ゲリラ豪雨が発生した場合、どのような浸水が生じるのか」、この解析法の構築に取り組んでいるのが武田准教授です。2000年に発生した東海豪雨で都市型水害の危険性が注目されるようになりましたが、それ以前に、地表面の浸水解析と下水道解析の連成解析の検討を実施していた武田准教授。「かつては、雨水排水に関する下水道の機能を十分に解析することができなかったため、内水氾濫の解析は非常に難しいものでした」。内水氾濫とは、大雨で川(外水)の水位が上がり、市街地に降った雨(内水)の水はけが悪化し、建物や道路が水に浸かってしまうことですが、この内水氾濫にも対応した解析システムを、先駆的な研究事例を基礎にして鹿島建設と共同開発。東海豪雨後、名古屋市でもこのシステムが使われ、現在でも「都市型水害予測解析システム」として市販されています。 先日、東海・東南海・南海地震により32万人の死者が想定されました。ただ適切な防災・減災の対策を取れば6万人に減ることも示されました。ここで重要なのは住民の危機意識の向上だと武田准教授は語ります。「大規模な浸水が起きたとき、人は逃げなければ被害を受けます。理想的な避難とは、災害に弱い場所を認識した上で、情報を的確に受け取り、早めに行動することです。ただ、残念ながら住民の危機意識はまだ高くありません」。防災教育の必要性が迫られています。また、現在一般的に使用されている50メートルスケールの分解能での解析では、全体的な浸水の様子を解析することはできても、一つ一つの家のダメージまでは解析できないとのこと。「現在進めているのは、数10センチメートルの分解能を有する道路などの細かな氾濫解析です。この解析が実現できれば、避難路の検討も十分な精度でおこなえます」。実際に即した対策の構築が今まさに着々と進められています。工学部 都市建設工学科 たけだ まこと武田 誠准教授[専門分野]水工学、都市耐水 (水環境問題、水災害における防災対策のあり方)[研究テーマ]都市域における水災の評価および対策に関する研究地域防災力向上に関する方法論に関する研究都市河川堀川の水質および水環境問題に関する研究■都市型水害予測解析システム地表面氾濫、下水道、河川をダイナミックに連成して解析。先駆的な研究が役立ち、解析システムが実用化。実際の暮らしに即した対策の構築を目指して。より細かな氾濫解析をおこない、水災害から人命・資産を守る。NO.3水工学23

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