幸友15
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中部地域屈指の総合大学として成長を続ける中部大学。今号は、7学部29学科から文理4学部の研究内容をそれぞれご紹介します。産官学連携あるいは事業化等にご活用ください。 私たちの身体を構成する細胞は、常に細胞の外側からの情報を内側に伝達し、その機能を調節しています。このように情報を細胞内に伝える仕組み、いわゆる“シグナル伝達”と呼ばれる領域を研究しているのが大西教授です。生物学の解析方法のひとつとして、現代では遺伝子を使った手法が必要不可欠。遺伝子が細胞の中でどのような働きをするかを調べるために、外から細胞の中に遺伝子を入れたり、また中にある遺伝子を除去することで、細胞の変化を確認します。その情報を伝えるメカニズムには多くの種類がありますが、中でも有名なメカニズムのひとつが、たんぱく質のリン酸化・脱リン酸化反応。「たんぱく質にリン酸基をくっつける酵素であるプロテインキナーゼに対し、リン酸基を除去する働きを持つ酵素がプロテインホスファターゼ。私は、主にこのプロテインホスファターゼを研究の対象としています」。 シグナルの正しい伝達は、私たちが健康を維持する上で重要であり、逆に言えば、シグナル伝達の異常が病気の原因となるのです。大西教授が目指しているのは、プロテインホスファターゼを通じたシグナル伝達のメカニズムを解明すること、あるいはその活性に作用する分子を発見することで、病気の治療法や新薬の開発へと繋げること。現在では、ガン、肝硬変、糖尿病、骨粗鬆症などが、プロテインホスファターゼの働きに関わることがわかっています。「ガンの治療に使われる抗がん剤などは、細胞の増殖を抑制する働きを持った薬であるため、健康な細胞の増殖も抑制されて、副作用が表れます。しかし、プロテインホスファターゼを標的にすることによって、問題となる分子をピンポイントで抑える“分子標的治療薬”の開発に役立つ可能性が大きいです」。酵素で生命の制御を目指す大西教授の研究。ひとつの発見が医学の進歩に貢献することも、大いに期待できます。応用生物学部 応用生物化学科 おおにし もとこ大西 素子教授[専門分野]分子生物学、生化学[研究テーマ]細胞内情報伝達系におけるプロテインホスファターゼの機能に関する研究■Malachite Green Assay法リン酸基を除去するプロテインホスファターゼの働きを表した図。ひとつの酵素を標的に、シグナル伝達を研究。目標は、分子標的治療薬の開発へ繋げること。細胞の情報伝達の仕組みを解明し、病気の治療法や新薬の開発に貢献。NO.2分子生物学22

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