幸友15
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研究室訪問 実に何千種類ものガスによって構成されている、私たちの息。その中に含まれる物質を測定することで、病気の診断に役立てるための研究をおこなっているのが近藤教授です。以前から近藤教授は、脂肪が燃えるときに皮膚から発生する“アセトン”という物質に注目していました。「普段、人は糖を燃やしてエネルギーを得ていますが、糖を正常に燃やせない状態にあるとき、例えば糖尿病の方などは糖の代わりに脂肪を燃やす量が増えます。そこで、アセトンの量を測定すれば、糖尿病の重度がわかるのではないかと考えたところ、実際に糖尿病の方は皮膚から出るアセトンの数値が高いことがわかりました」。現在、息を吐き出すだけでアセトンの数値を測定できる小型の呼気測定器を用いて、糖尿病の人や糖尿病を心配する一般の人たちでも簡単に判定できる方法を企業との共同研究によって模索中。糖尿病の予防や糖尿病患者の状態把握などに役立てることができそうです。 また、主に呼気の測定は、ガスをひとつずつ測定する方法でおこなっていますが、数種類のガスを一度に測定する方法も模索しています。例えば、国立循環器病研究センターや企業と共同で研究している内容は、気体の分析をおこなうガスクロマトグラフを使用し、さまざまなガスのパターンを一度に分析する方法。「さまざまなパターンを広く見ていくことで、その中から何かの病状に結びつくパターンがないかを調べています。私たちが把握しているガスはほんの一握りですが、新たに病気の原因となる物質は、まだまだたくさんあるはずですから」。今後、呼気に含まれるあらゆるガスの分析が進み、一度にさまざまな解析がおこなえるようになれば、わざわざ血液を採取して血液検査をする必要もなくなります。臨床の現場で、また一般家庭で、息を吐くだけで簡単に健康状態がわかる時代が訪れるかもしれません。生命健康科学部 スポーツ保健医療学科 こんどう たかはる近藤 孝晴教授[専門分野]内科学、消化器病学[研究テーマ]消化器病学、生体ガスと病態■糖尿病患者の治療別皮膚アセトン濃度糖尿病の状態が重いほど、皮膚のアセトン濃度が高くなることがわかる。呼気の測定によって、糖尿病の重度を解析。呼気の測定技術が進歩すれば、検査も簡単に。吐き出す息に含まれるガスを分析し、健康状態の理解に役立てる。NO.1シーズ紹介生体ガス医学21

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