幸友15
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 人類で初、月面へ着陸したアームストロングさんが、今年8月に亡くなった。82才だった。アポロ11号が着陸した映像は自宅のテレビで見ていて興奮したおぼえがある。1969年7月、これから宇宙旅行の時代が来るかも知れないと思った。 17世紀のフランスで『日月両世界旅行記』を書いた人がいる。その名はシラノ・ド・ベルジュラック。この奇妙な人はガラス瓶の中へ細い露(水滴)を封入し、この瓶を身体にたくさん取りつけ、太陽光を浴びていると空中へふわりと浮き上がり、上昇し続ける。そのまま、月の国・太陽の国を訪ねるお話。まあ、風船かロケットのようなものを考えたわけで、詳細は挿画が入った本書をごらん下さい(赤木昭三訳・岩波文庫刊)。 科学文明が進歩した現在、アームストロングさんは「月の人」には出会っていないし、「ウサギが餅を搗く光景」を見てはいない。ただ、殺伐とした荒野が広がっているだけであった。月面着陸から40余年経った今、太陽へ着陸してみようという人はいるだろうか。なるほど、電磁波などの観察技術は進化し、太陽観測は行われているようだが、17世紀のシラノ氏の如く、太陽へ出かけて行く妄想の人は少ない。地球上の酷暑とはくらべものにならないほど、太陽着陸は暑いでしょうねえ。 毎朝、天気予報をテレビで聞いていると、女性アナウンサーが「今日は洗濯日和でしょう」と言う日がある。全自動洗濯機が普及しても乾燥機を使わず、お天気が良い日は洗濯物やふとん、シーツを太陽光に向けて干したくなる気持ち。太陽が発した光は8秒ぐらいで地球へ届くという。その光線で物を干す、という習慣は、亜熱帯に棲む日本人の歴史・風土から生み出されたものだろう。物干しばかりではない。穀物や果物ほか種々の秋の収穫物は、この太陽の恵みであるし、地球上の生き物のいのちの維持も太陽のおかげ。と考えるならば、洗濯日和もかけがえのない「晴天の一日」と思われてくる。 今年の夏日、街を歩いていたら、日傘・帽子に、長い手袋をはめ、サングラスをかけたりする婦人を所々で見た。なかには黒い日傘・黒いスカーフ・黒めがね…全身黒づくめ、女忍者のような婦人とすれちがい、ドキリとした。日除けの用具がさかんに使われている(図A)。とくに、近年は日差しの強い日々が続くので、光線をさえぎる工夫をする人たちが目立つ。じつげつ6洗濯日和で図A 日除けの女性たち(2012年8月・名古屋市内で。岡本靖子採集図)夏の風俗からせんたくびよりす19

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