幸友14
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ベーションがない限り、今の地下資源依存型の社会は崩壊するでしょう。今後20年〜40年の間に、石油などほとんどの地下資源がピークを迎えてしまうからです。そうなる前に私たちはいま、何を未来に遺すべきでしょうか。それは、生物資源にならざるを得ません。加えて、動物、植物、昆虫など自然から学ぶこと、つまりネイチャーテクノロジーが重要になります。自然や生き物の持つ低環境負荷かつ高度な機能から学び、科学技術や産業に応用していく。それこそが、私たちが着目すべき点といえます。 日本は元々、大雨や台風が多く、おまけに地震国です。日本の陸地面積は世界の0・25%ですが、この20年、世界で起きたマグニチュード6以上の地震の2割は、日本で起こっています。このような大変厳しい状況だからこそ、日本人は自然の力を「いなす」という知恵をつけてきました。自然を読み解き、逆らわず、忍従の心で自然と付き合ってきたのです。その結果、耐震工法や土木技術など、多くの匠の技を生み出しました。常に自立循環的な国土をつくり、生態系サービスを享受できる環境を整えてきたのです。しかし第二次世界大戦後、マッカーサーが日本にヘンリー・フォードのモデルを持ち込みました。そのモデルとは、都心で働き、郊外に住み、その間の移動を自動車で結ぶというもの。ヘンリー・フォードは自動車をつくっただけでなく、郊外開発をおこなうことで、自動車を売るためのビジネスモデルもつくったのです。このモデルが持ち込まれたことで、結果として都市の格差が生まれ、エネルギーの巨大な需要を生み出しました。ですが、今回の震災後の節電により、私たちが今までいかにムダ遣いをしていたかを知るいい機会になったのではないでしょうか。そして世界はいま、環境負荷を拡大していく方向から、集約していく方向にシフトしています。つまり、社会と経済と環境、これらを一体化したコンパクトシティをつくっていくということです。 では、環境革命下の震災復興はどうあるべきでしょうか。これまではさまざまな機能を中央に集中し、そこから全国へ機能分担する「リンゴ型」の考え方でした。しかしその結果、今回の震災を含め、こういった方法をとった企業はことごとく大きな痛手を負っています。そこで私が提唱するのは、それぞれの地域に自立した機能を持たせる、多極分散の「ブドウ型」です。このブドウ型は、一つひとつの地域が自立しているので、どこかの地域に何かがあったときも、全体の被害は少なくて済みます。元々、こうした国土構造を日本人はつくってきたのです。そこに立ち返るべきです。極論を言えば、「廃県置藩」をして、もう一度県から藩に戻すということ。分節型の地域構造をつくり、もしものときのダメージを分散させる。さらに、それぞれの地域でそれぞれの産業に則したクラスターをつくり、そこにみなさんが安心安全に住める住まいを提供する。コンパクトシティをつくる。そうやってこの復興を、環境革命に合わせた新しいしあわせのモデルにしていくことが、これから重要なことだと考えています。 そして、自然をいなしていく術を身につけている我々日本人がその知恵を発揮して、いかに新たなイノベーションを起こすか。それが、これからの私たちに問われている姿です。再び都市と自然が、呼吸をともにするべき。環境革命に合わせた新しいしあわせのモデルを。涌井 史郎氏1945年鎌倉市生まれ。東京農業大学農学部造園学科卒業。ハウステンボス、全日空万座ビーチホテルなどのランドスケープデザイン、都市計画を手がける。日本造園学会賞、国土交通省大臣賞等、受賞歴多数。2005年に開催された『愛・地球博』で会場演出総合プロデューサーを務めたことをきっかけに中部大学へ。数多くの国・自治体・法人の委員、テレビのコメンテーターとしても活躍中。Profile38

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