幸友14
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 日本経団連による採用活動時期の是正、東日本大震災の影響もあり、現時点での学生の内定獲得状況は昨年度と比べて遅れ気味です。同時期の数字を見ても、今年は約5ポイント低くなっています。震災や円高によって先行きが不透明になり、企業が採用を躊躇していることも原因として挙げられるでしょう。しかし企業にとって、会社の将来を託す人材を確保することは必要不可欠な課題。採用活動を取り巻く環境が変化しても、変わることなく試されているのは、学生自身の力です。昨年度より中部大学では、学生の社会人基礎力の向上を目指し、1年次の段階からキャリア教育をおこなっています。一言に就職活動と言っても、会社説明会に参加することや採用試験を受けることからが、就職活動ではありません。自分という人間をよく分析したり、自分にはどんな職業が向いているかについて考えてみることも、広義に考えれば就職活動です。よって、1年次からすでに就職活動は始まっており、その間にどんな準備をしておくかが重要だといえます。そして今年始め、採用活動時期の是正もありましたが、採用試験を受けるなどの具体的な就職活動は、きちんと学生生活を終えてから始めるのが本来のあり方なのです。 従来からの日本の雇用形態は、4月一括採用、終身雇用、年功序列という形ですから、企業はその中でできるだけ優秀な学生を採用しようとします。さらに近年では、コミュニケーション能力を中心に、企業が学生に求める人材像はより高度なものになってきています。単にポテンシャルが高いだけでは不十分で、企業の採用担当者に対してきちんと能力をアピールすることができる自己表現力も必要です。当然、自己表現をするにはそれだけの中身が伴っていなくてはなりません。本物志向の強い社会に認められる本物の人材を育成していく教育が、いま大学に求められているのです。企業が学生に求める人材像は、より高度なものに。採用活動の変化に動じない、本物の人材育成を。2011年1月、日本経団連は「新卒者の採用選考活動の在り方について」発表し、企業の採用広報活動の開始日を学部3年/修士1年次の12月1日と定めました。早期化する採用活動を是正するために、ようやく重い腰を上げた印象です。そんな中、3月11日には東日本大震災が発生。震災被害による先行きへの不安感が、企業の採用活動にさらなる影響を及ぼしています。ただ、将来を託す人材の確保について、引き続き企業が危機感を持って取り組んでいるのは確かなこと。いまこそ、学生の就業力や社会人基礎力の養成、そして大学教育の成果が問われています。33

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