幸友14
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 睡眠のタイミングは脳の視床下部の視交叉上核にある体内時計で調節されています。体内時計は自律神経系・内分泌系・免疫代謝系のリズムも支配しています。睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に分類されています。健常者では入眠→ノンレム睡眠→レム睡眠と経過し、これは約90分間を一周期として一晩に4、5回繰り返されます。ノンレム睡眠は深さにより4段階に分類され、成長ホルモンは第一睡眠周期の徐波睡眠期(睡眠段階3-4)に最大の分泌量を示します。また、抗ストレス作用・抗炎症作用をもつコルチゾールの分泌は起床前後で最大となります。レム睡眠中は、自律神経活動が激しく変動しており自律神経系の嵐と言われています。ノンレム睡眠は休息と回復、成長と関係し、レム睡眠は大脳の情報処理に関与していると考えられています。睡眠のタイミングや深さは、自分ですべてコントロールできるものではありません。最近の研究において睡眠時間や、夜型か朝型かは遺伝子の多様性による体質に基づくことも明らかにされつつあり、自分の睡眠特性を把握することが良好な睡眠の維持に重要です。 睡眠時間の短縮化は肥満・糖尿病・心血管病の発症と関係するとも報告されています。日本人を対象とした最近の調査では睡眠時間7時間の人の死亡率が最も低いことが示されました。また。50〜70歳代において、睡眠時間が6時間未満の人は狭心症・心筋梗塞の発症が増加し、死亡率が増加することも報告されています。 加齢による代謝の変化や活動量の減少で、40歳後半から睡眠の欲求は低下しますので、若い頃と同様な睡眠時間を確保しようとすれば、それが睡眠の悩みの原因にもなります。不眠のタイプには“寝つきが悪い”、“夜中に目が覚める”、“朝早く目が覚める”の3つのタイプがあります。寝つきが悪いタイプは若い人や中年で多くみられます。この対策には規則正しい睡眠を心がけることが大切です。夜中に目が覚める対策としては昼間の活動量を増やす、朝早く目が覚める対策には夜楽しめることをするようにして寝る時間を少し遅くするなどで改善が期待できます。寝酒は不眠の解決法と思われていることが多いですが、少量の飲酒でも睡眠に悪影響を及ぼすことが示されています。二日酔いとならなくても、翌日の活動能力の低下をもたらすことがあります。さらには不眠を引き起こしたり、睡眠時無呼吸が悪化健康長寿・疾病予防のための適切な睡眠臨床検査技術教育・実習センター/中部大学 生命健康科学部 生命医科学科 教授 野田 明子のだ あきこ25

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