幸友14
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研究室訪問 生活習慣病をはじめとしたさまざまな疾病の原因となり、現代における大きな健康問題の一つでもある「肥満」。この肥満の判定方法や基準値についての研究をおこなっているのが、甲田准教授です。「肥満の分析手段として、内臓脂肪と皮下脂肪に注目しています。2003年より、国民健康・栄養調査において、腹囲の測定でメタボリックシンドロームの診断をおこなっていますが、腹囲の数字は皮下脂肪の厚みに左右されやすい値です。しかし、腹囲の値は小さくても内臓脂肪が多い人もいます。見た目はそれほど太って見えなくても、実は内臓に脂肪がついているという人です」。腹囲測定の値にとらわれず、日頃から健全な生活を心がけることが肝心だといえます。 また、今後甲田准教授が調査を予定しているのが、若年女性の体格と体力、月経等との関係性について。一般的に身体の脂肪について知る方法として、体脂肪率の測定がありますが、特に若い女性は、ダイエットなどで体脂肪率の数字を気にしすぎることは好ましくないようです。「体脂肪率は体重に占める脂肪の割合であり、一つの目安にすぎません。脂肪が多ければ体脂肪率は高くなりますが、脂肪が多くなくても筋肉量が少なければ体脂肪率は高くなります。体重が少ないのに体脂肪率が多い人のことを『隠れ肥満』と呼ぶのを耳にしますが、私はむしろそれは『隠れ痩せ』であると考えます。脂肪を落とすことより、筋肉量を増やすことに目を向けるべきなのではないでしょうか。脂肪は女性ホルモンをつくる働きもあり、体脂肪を減らしすぎると、月経不順を招く原因にもなりますので注意が必要です」。元々、世界には飢餓で苦しむ人がいる一方で、飽食や肥満に悩む国があることに疑問を感じ、研究を始めた甲田准教授。脂肪を減らす必要に迫られる前に、脂肪を増やさないための方法を明らかにすることで、生活習慣病の予防を目指しています。私たちの健康を害する肥満を予防するための方法を研究。疫学応用生物学部 食品栄養科学科 こうだ みちこ甲田 道子准教授[専門分野]疫学(肥満、形態計測、体脂肪)、スポーツ栄養[研究テーマ]皮下脂肪および内臓脂肪と生活習慣病との関係、スポーツ選手の食事・栄養管理NO.3肥満の基準を、内臓脂肪と皮下脂肪から考える。脂肪を落とすより、筋肉量を増やすという視点を。中高年男性において内臓脂肪面積および皮下脂肪面積をそれぞれ三等分して分類した図。Aは皮下脂肪面積90cm²未満で内臓脂肪面積が110cm²以上の人の割合である。このように内臓脂肪が多くても皮下脂肪が少ないと腹囲85cm以下と判定される割合が高くなることがわかる。■腹囲85cm以上の人の割合23

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