幸友14
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中部地域屈指の総合大学として成長を続ける中部大学。今号は、7学部29学科から文理4学部の研究内容をそれぞれご紹介します。産官学連携あるいは事業化等にご活用ください。 私たちの身体を構成、維持するエネルギーの一つである脂質。田口研究室では、主に病態モデルマウスや人の血液サンプルを使って、脂質の代謝異常がどんな生活習慣病を引き起こすのか、また食事の脂質のバランスにはどういった注意が必要なのかについて研究をおこなっています。「生活習慣病の原因は、主にエネルギーの過剰摂取。そうした余分なエネルギーの中から、脂質の酸化物が悪い形で身体の中に蓄積されてしまいます。たとえば、動脈硬化や心筋梗塞を起こしたところには、血しょうや内臓脂肪の中に脂質酸化物の増加がみられることがわかってきました」。それらの脂質酸化物における分子の種類や量を分析することで、脂質の代謝異常によって引き起こされる病気の発症リスクや病態進行度の予測が可能になったり、またその病気を防ぐためにはどんな脂質に気をつけて食生活をおくればいいのかといった予防医学にも貢献できます。 また、私たちが普段食べている肉と魚の脂は全く別の系統の脂のようです。「肉の脂には異物をやっつけて身体を守る働きが、魚の脂には炎症を抑える働きがあり、それらのバランスが大切。また、どちらの脂も体内ではつくれないため、食事によって摂取するしかありません。ですから、どういう食生活をおくっているかによって、身体の中の脂質の構成が決まってしまうのです」。脂のバランスも意識した上での、食生活が大切だと言えます。さらに田口教授は以前、東京大学の薬学部との共同研究で、炎症を抑える働きがある魚の脂の酸化物から、すでに見つかっているものより10倍も活性の強い物質を発見しました。それを元に、製薬会社が炎症を直すための薬を開発しているそうです。このように、私たちの生理的な機能に密接に関わっている脂質の働き。その動きを見ていくことで、新しい治療法や診断法につながるさまざまな発見が今後も期待できるはずです。脂質の分析によって、生活習慣病の原因や予防法を解析。脂質生化学生命健康科学部 生命医科学科 たぐち りょう田口 良教授[専門分野]脂質生化学、質量分析学、メタボロミクス、脂質代謝異常関連疾患[研究テーマ]生活習慣病等、脂質酸化を要因とする疾患の解析。健康・食品栄養と予防医学の為の脂質解析。NO.2病変部にみられる脂質酸化物の増加。脂質の分析が、予防医学や新薬の開発に貢献。■血しょう中の低密度リポタンパク質(LDL)の 酸化と動脈硬化22

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