幸友14
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 過去には、湾岸戦争、IRAの爆弾テロに関する対応から、SARS・鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等の感染症対策のコンサルティングまで、これまでに400社を超える企業や組織のコンサルティングに携わられてきた茂木氏。講演では、日本の企業が海外でビジネスをおこなう際に考えられるリスクの分析とその対応策について、主に中国を中心とした新興国での状況を例にとり、多角的かつ細やかにお話いただきました。まず「すべてのリスクを回避することがリスクマネジメントなのではないか、と言われることがよくありますが、それは間違いです。リスクマネジメントとは、企業がこの先20年後も50年後も存続していくために脅威となる大きなリスクを見つけ出し、それに対処していくこと。世界中で政治、経済、社会のすべてが流動化している現代において、リスクも流動化、多様化、巨大化しており、その数は無限に存在しています」と指摘。目先のリスクだけでなく、将来的なことも念頭に置いてリスクマネジメントをおこなう必要性を説明されました。さらに「日本では考えられないようなことが当たり前に起こる海外でのビジネスは、非常に高いリスクと付き合わざるを得ません。しかし、そのリスクに見合って余りあるほどのチャンスがそこにはあります。日本の有力企業の多くも、海外での収益が非常に高くなってきています。ただ危ないというだけでリスクを回避することは、企業が安定的に成長していく上で、むしろマイナスな要素となるでしょう」と言及。リスクと向き合い、海外でのビジネスに挑んでいく価値を説きました。そして最後に、「リスクマネジメントを確実におこなうことで、海外でのビジネスチャンスは大きく広がっていく」と、改めて海外ビジネスにおけるリスクマネジメントの重要性を語り、講演を締めくくりました。 1994年に、ダイエーの創始者であり、流通科学大学の設立者でもある中内功氏と初めてベトナムを訪れた上田氏。それをきっかけに、その後ラオス、カンボジアにも訪れ、2006年にはベトナムで投資運用会社を設立されました。講演は、メコン川流域のベトナム、ラオス、カンボジアの3国におけるマクロ的なビジネスチャンスと問題点からスタート。「アジアの中でトップを切って経済成長を遂げている中国、次いでインド、その次がラオス、カンボジア、ベトナムの3国で、この地域は3国が一体化して発展を遂げていて、特にインフラ整備が非常に進んでいる」と年代別の写真を用いて解説されました。その後、2015年に成立を目指しているアセアン経済共同体(AEC)について触れ、EU(欧州連合)がEEC(欧州経済共同体)創設から、独仏の対立と協調のなかで成立までに35年を要したことを例にあげ、「2050年までの長期的なスパンで、この地域が変貌を遂げることは間違いないだろう」と言及しました。その一方で、ベトナムの経済的・政治的な課題として、貿易収支の改善やインフレの抑制のためには「裾野産業」の育成が急務であると指摘し、そこにこそ日本の中小企業の出番があると提言しました。中小企業にとってのビジネスチャンスと留意点については、「信頼できるパートナーを見つけることが最重要。現地企業の力量や能力を目利きできる日本人やベトナム人がいれば安心。複数からの多角的な評価を取ることも大事だ」と述べられました。最後に、ベトナム人の国民性についても触れ、成功のシナリオとして、「国際競争力の高付加価値の製品・サービスを日本企業とベトナム企業が技術協力して、中国より低価格で海外・国内市場向けに提供すること。ベトナムの国内資源を開発・加工して国内販売・輸出することだ」と説きました。〈演題〉〈演題〉海外ビジネスにおけるリスクマネジメントの重要性メコン川流域3国における経済環境とビジネスチャンス    もてぎ ひとし〈講師〉茂木 寿氏    うえだ よしあき〈講師〉上田 義朗氏東京海上日動リスクコンサルティング株式会社ERM事業部長流通科学大学 教授(社)日本ベトナム経済交流センター 副理事長第15回企業経営講演会2011年1月26日(水)開催第16回企業経営講演会2011年7月27日(水)開催※所属・役職は講演当時のものです。18

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