幸友14
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 2010年4月、名古屋の中心地の一角である葵町に開館したヤマザキマザック美術館。館内は1階にチケット売り場とミュージアムショップがあり、4階にはアール・ヌーヴォーのガラス工芸品と家具、5階には18世紀から20世紀に至るまでのフランス美術の流れを一望できる絵画コレクションが展示されている。 ヤマザキマザック株式会社の代表取締役会長を務めた山崎照幸氏(1928〜2011)が、忙しい海外出張の合間、休日に美術館を訪れることが楽しみとなり、徐々にフランス美術に魅了され、心に響く作品を自身の目と足で一つ一つ慈しみながら収集したという作品の数々。中でもロココの油彩作品は16点もの数を揃え、これだけまとめて見ることができるのは日本でもこの美術館だけだという。また、すべての絵画作品において、額装からガラス板やアクリル板が外されているのは、「お客様には、筆跡や色彩などを直接、作者と同じ視線で観賞していただきたい」という心遣いによるもの。さらに、作品の背景にある歴史やストーリーを学びながら観賞を楽しむことができるよう、音声ガイダンスが無料で提供されているなど、おもてなしの心が随所に表れている。美術鑑賞にあまり馴染みのない方でも楽しく過ごすことができる美術館だ。 さて、5階のエレベーターホールでまず迎えてくれるのは、コレクションのきっかけともなったボナールの作品。続いてヴァトー、ブーシェ、シャルダン、フラゴナールなどロココの画家作品が並ぶ展示室は、高さ5mを超える天井に美しいシャンデリアが輝き、深紅の布で彩られている。この壁布は、オーストリアのバックハウゼン社に特注で製作を依頼したというこだわりの布だそうだ。展示室は時代によって、黄、青、緑と、それぞれ色分けがされている。18世紀ロココの作品が並ぶ赤の部屋では、「フランス絵画の父」と称され、ロココの最重要人物でもあるヴァトーの『夏の木陰』を見ることができる。ちなみにこの作品は、ボタンによって上げ下げが可能な拡大鏡が設置されており、ヴァトーならではの筆致の精緻さや濃密さをじっくりと観作品を通して、私たちに新たな価値観や驚きを与えてくれる美術の世界。今回は、世界最大手の工作機械メーカーであるヤマザキマザック株式会社が開館したヤマザキマザック美術館をご紹介。日本では貴重なロココのコレクションを揃える、その魅力をお伝えします。15

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