中部大学教育研究20
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1はじめに「これまでに経験したことのない」「特別な」学期がようやく終わった。2020年春学期はコロナ感染症予防のため、急遽すべての授業が遠隔授業となった。遠隔授業をどのようにすればいいのか、遠隔授業とは何か、これまでの授業資料は遠隔授業のなかでどう使えるのか、わからないことだらけだった。何よりも、何をどうすればいいのかについてどこで誰と話し合えばいいのかが皆目見当つかず、不安でいっぱいだった。パソコンに強い人であればネットから情報を探して自力で学ぶことができたであろう。しかし、私はようやくワードや簡単なパワーポイントを作る程度の能力しかなく、これから遠隔授業において主流になるとされたCoursePowerもまったく使ったことがないという情報弱者であった。文系学部である国際関係学部には私ほどではなくても、遠隔授業に困っている人は他にもいるのではないか、だれにも相談できない人がいるのではないかと思い至り、相談する機会をつくりたいと考えた。また、その機会を企画するのが私のような情報弱者であることはむしろよいことのように思えた。私には遠隔授業について何も教える力はないが、困っている人と教えてくれる人をつなぐことはできるのではないか、私自身が何より困っている当事者なのはこの企画により切実に向き合うことにつながるのではないか。このように思えたのは国際関係学部の同僚ならきっと助けてくれるだろうという信頼感があったからでもある。こうして学部教員の協力のもとほぼ毎週水曜日午後に遠隔授業講習会を15回開催することができた。本稿は、文系学部である国際関係学部が未曽有の危機であるコロナ禍のなか、初めての遠隔授業実施に際し、お互いをどのように助け合ってきたのか、いかに奮闘してきたかの記録である。15回の遠隔授業講習会の経緯や内容のほか、メールでの情報共有を具体的に紹介したい。ただ、講習内容については情報強者の読者には既知のことも多いと思われるため、講習内容の具体例よりも講習会の流れに重きをおきたい。情報弱者によるコロナ禍下における奮闘の民族誌(エスノグラフィー)という位置づけである。臨場感を持たせるためやや冗長な記述となるが、「神は細部に宿る」をモットーとする私の学風に免じて容赦していただきたい。なお、本稿は講習会の呼びかけ役をした中山と、講習会に毎回参加し、情報強者としての能力を遺憾なく発揮して迷える同僚たちを指導していただいた大澤肇先生の共著とする。大澤先生には、本稿の3「国際関係学部教員による春学期のまとめ」を執筆していただき、第13回講習会に参加した学部教員のそれぞれの遠隔授業の総括を紹介していただいた。2遠隔授業講習会の講習内容第1回遠隔授業講習会は4月15日(水)午後に行われた。講習会の開催は、1週間前の4月8日(水)に―79―コロナ禍下の文系学部による遠隔授業講習会-国際関係学部2020年春学期奮闘記-中山紀子*1・大澤肇*2要旨2020年春学期コロナ禍のなか、我々国際関係学部教員はほぼ毎週水曜日に15回の遠隔授業講習会を開いた。講習会は学部教員自身によって行われた。CoursePower、Zoom、GoogleClassroom、Drop-boxについて教える教員もいたし、また自分の授業資料を紹介する教員もいた。我々はお互いに助け合い、遠隔授業についての情報を共有し合い、この困難な時期を何とか乗り切った。本稿は急遽コロナに見舞われた我々の奮闘記である。中山紀子が講習会の概要と内容を紹介し、大澤肇が学部の各教員の遠隔授業のまとめを紹介する。キーワードコロナ禍、遠隔授業、国際関係学部、奮闘記*1国際関係学部国際学科教授*2国際関係学部国際学科准教授

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