中部大学教育研究20
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して関心が持たれていると言えるだろう。このような学生は具体的にどのような職をイメージしているだろうか。表3は、「観光・旅行業に関心がある」と回答した学生の持つ観光・旅行業の具体的なイメージである。自由回答としてあるが、おおよそ整理して示してある。最も多いのが航空会社の地上職など空港関連の職をイメージする者が多く(28/62名)、次いで旅行会社(19/62名)、添乗員、ホテルなど宿泊施設と続く。その他「市町村の観光協会」などの回答もあったものの、調査対象が1年生であったためか、やや曖昧なイメージが多かった。さらに学生の観光・旅行業イメージを探るため、一つの指標として、関連する資格試験への関心について調べた(表4)。その結果、最も知られていたのは、世界遺産検定(85/113名)であり、次いで通訳案内士が認知されていた(26/113名)。観光・旅行業関連で重視される国家資格である旅行業務取扱管理者(国内)(13/113名)、旅行業務取扱管理者(総合)(7/113名)は少数の者しか認識していなかった。また学生側のニーズに関しても調査すると、学部独自のセミナーへの参加意向として、観光旅行業そのものについての研修・セミナーよりも(68/113名)、観光旅行業に関連した語学トレーニング講座(80/113名)の希望が多かった。この結果から、観光・旅行業への進路に関心のあるものが半数を超え、一定の希望者が存在することが理解される。その反面ややイメージは曖昧かつ単純であるようにも思う。また世界遺産検定と通訳案内士への高い認知度が見て取れる。特に通訳案内士の「外国語+観光旅行業」というイメージは、国際関係学部の学生の観光・旅行業、ひいてはインバウンドツーリズムへの進路イメージを代表するものであるかもしれない。ここから、インバウンドツーリズム業種への進路を意識したプログラムに、学生に観光・旅行業の広いイメージ(見聞きしたことのない業種、観光地側の業務など)を示すのは一つの良い手法と考えられる。また外国語関連の内容もニーズには合うのではないかと考えられる。3.2国際関係学部における観光・旅行業関連科目と評価特別な教育プログラムについて考える際に、学部のカリキュラムにある科目を利用することを考えるのは当然のことであるだろう。通常「国際系」の学部では、外国語と「国際知識」とも言うべき内容を含むことが多く、インバウンドツーリズム業種に対応した教育プログラムに有用な科目が含まれている可能性が高い。本学国際関係学部の場合も、外国語科目に加え、国際問題や国際社会、他文化の理解など「国際知識」に該当する科目が存在する。通常の英語、中国語などの外国語科目の中に「観光ホテル英語」があり、ある程度学生側のこの分野への関心に対応する形で開講された科目であると考えられる。また外国語以外の科目でも、「観光文化論」「世界遺産を学ぶ」が存在する。特に「世界遺産を学ぶ」の授業では、世界遺産検定の受験が推奨されている。前節で述べたように、各種試験の中で世界遺産検定の最も認知度が高いのは、この科目のためであるかもしれない。しかしこのような科目はある程度存在するものの、前述のように観光学+外国語+観光実務がインバウンドツーリズム業種に必要な能力と考えるならば、実際のところ不足が見られるといってよい。外国語の科目を系統的に履修するならば外国語の能力そのものはつくとしても、インバウンドツーリズムに関する観光学や観光実務関連の科目は存在しない。このようなカリキュラムの中で、インバウンドツーリズムに関心のある学生はどのようにして学習を進めてゆくのだろうか。現在国際関係学部4年生のAさんの学習の動機と「ルート」について確認したい。Aさんは入学当初から観光旅行業に関心を持っていたわけではなく、2年生までは海外研修や留学だけに関心があり、2年生でイギリスでの海外研修に参加した。そこで盛んにおこなわれる外国人観光に関心を持った。自身の関心と合い、かつ能力と見合う進路を考え、キャリアセンターの資格講座を受け、3年秋に国家資格である「国内旅行業務取扱管理者試験」に合格している。Aさんは2年生の秋の「世界遺産から学ぶ」を特にインバウンドツーリズムへの関心とは別に受講していた。3年生に入りこの分野について意識をし、「観光国際系学部におけるインバウンドツーリズム業種に対応する教育プログラムに関する考察―71―表3国際関係学部1年生の観光旅行業イメージ(複数回答)表4国際関係学部1年生の観光関連資格イメージ(複数回答)

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