中部大学教育研究20
78/168

SRFでは「この学習時間に“これは特に頑張った”“これができて良かった”“発見があった”“変化が感じられる”と思ったことを書きましょう。」という項目がある。この項目の記録の中で、特に「~ができるようになった」「~ができた」という表現が使われていた提出数を抽出してみた。春学期のSRFの提出数1751件のうち「できる」「できた」という表現があったのは、113件で、図22のような分布になっていた。第1週目から第14週までの間、学生の「できる」気持ちの変化の波は第5週目に起き始め、2ヶ月目へと続いている。この時期は、「落ち着いて学習できている」と教師側が感じ始めた時期と重なっている。SRFの記録の第一の目的は、学生自身が自分の学習足跡を振り返りながら次の学習へ進み、学習を積み重ねることであるが、第二の目的は学習の様子や気持ちを教師が把握し、次の授業に反映しようということである。学生と教師をつなぐパイプの1つとしてSRFは役立ち、タイミングを逃さず助言・指導するのに活用することができた。英語個別面接の時間は、実際の英語コミュニケーションの場として、そして学習目標をあらたにする機会として、重要であった。「英語ネイティブの先生と初めて一人で話をした」というように、後悔や緊張感、向上心をSRFに残していた学生が少なくなかった。10分間という短い機会であれ、必ず一人ずつと対話することができる面接は貴重な10分間で、授業を通して培われている力と一層強化しなければならない点を教師も確認することもでき、授業を最適化していく上で予測以上に役立てることができた。8考察と今後の課題本授業の授業時間は2コマ連続で、時間割どおりに実施すると180分と長い。パソコン操作やアプリ操作に不慣れなことから生じる抵抗感を減らすこと、そのかたわらで英語学習を諦めてしまわないようにすること、集中力を高めていくこと、意欲が芽生えたらそれを持続させること等を遠隔授業でどのように叶えていくかは、最大の挑戦であった。図23は、これまで本授業で行ってきたブレンド型授業におけるe-Learningの役割を示したものである。遠隔授業では、対面とオンライン教材をブレンドすることは叶わない。しかし、インプットしたことをそこで終わらせることなく、練習時間を確保して、インテイクへと結び合わせていく、インプット・アウトプットを行ったり来たりさせるということは、もう1つの「ブレンド」型授業の形として、実現できることではないかと考えた。「先生が目の前で監視していない」授業形態は、ほとんどの学生が初めてだったのではないだろうか。遠隔授業開始当初から教師間で話題となったのは、いかに不正を防いで各学生を学習の主体とするかであった。安易に課題を終えるだけの方向を選んでしまわず、自らが学ぼうとする姿勢、自分自身の力を培うのだという目標設定へ導くことができるのかという点であった。何のためにどう学び、どのように語学が自分の中に定着していくかを熱心に伝えたところで、それが響くかどうかは相手次第であろう。果してどのように指導したらよいのだろうか。非同期型授業の場合、替玉受講を完全に防止する策はないと言える。例えば教師が学生を「監視」しようと、Zoomで同期型授業を行い、試験監督のように学生を見張ったとする。しかし、それでも学生がネットの向こう側で何をしているかをどこまで監視することができるのだろうか。また、監視することが授業の目的なのだろうか。遠隔授業では、身の回りに溢れているディバイスやツールあるいは人を使えば、自身が受講しているかのように装うことは容易にできてしまう。同じ授業の受講生同士が授業時間中に何らかの手段で繋がり、課題を手分けして解答したり、正解入手を待ったりすることもあり得る話である。表で教師が授業をする傍らで、SNSグループや、Web会議ツールを使って「裏授業」を同時進行させることも容易にできる時代だ。では、「自らが学ぼう」とする授業を成立させるには、どうしたらよいのだろうか。中部大学教育研究No.20(2020)―64―図23e-Learningの役割(Oguri&Kato2015)図22授業週ごとの肯定的な表現数

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る