中部大学教育研究20
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業見学コメントシート(ピア評価)」の記述をまとめた。そして、この記述を切片化したものを、表3の18種類の下位カテゴリーに再分類し、この切片の中に、各下位カテゴリーに該当する評価視点からのコメントが1つでも存在した授業の担当者と、1つも存在しなかった授業の担当者に、この14名の教員を分類した。表4には、各評価視点を含むコメントをメンバーから受け取った授業担当者の割合を示した。例えば、<②経験値>の視点を含むコメントを、14名中6名(42.9%)が、同じグループのメンバーから受け取っていたことを表している。表4を見ると、授業担当者が行ったリフレクションに比べ、ピア・コンサルテーションには、より多面的な評価視点が含まれていた。これには、「(c)授業見学コメントシート(ピア評価)」に対し、4名のメンバーが個別に回答していたことも影響しているが、授業担当教員が受け取るコメントの多様性は、「(b)授業振り返りシート(授業公開直後)」によって授業担当者がリフレクションを行った時に比べ、結果的に高いものになっていた。5.3授業スタイルの類型の抽出表4に示したように、18種類の授業評価の視点の中でも、『1.基盤』の中の<③管理>と、『2.教授』の中の<⑤教材提供><⑥知識伝達>と、『6.学生の学修結果』の<⑰授業態度>については、常に7割以上の教員が言及していたが、その他の下位カテゴリーについては、個人差が大きかった。しかし、授業の評価視点の下位カテゴリーが記述内に出現するパターンには、ある程度の共通性も見られた。そこで、「(a)授業紹介シート(授業公開前)」における18種類の授業評価の視点の有無に基づき、分析対象者である14名の教員の事例をモンタージュ法(落合,2004)で重ね合わせたところ、特に教員の授業運営に関する1~4のカテゴリーにおける授業の評価視点の出現パターンによって、第Ⅰ型~第Ⅴ型の5類型が抽出された(表5)。そこで、授業の評価視点の出現パターンに基づき、類型別の授業スタイルの特徴を、「教授型(第Ⅰ型)」「教授+練習型(第Ⅱ型)」「教授+交流+複写型(第Ⅲ型)」「教授+全活動促進型(第Ⅳ型)」「演習型(第Ⅴ型)」と命名した。各類型には、それぞれ1~5名が該当した。表5において、チェック()が付いている下位カテゴリーは、同類型の中で少なくとも3/5以上の人が共通して挙げていた視点である。なお、本研究の分析対象者が公開した授業は、シラバス上、講義科目9件と演習科目6件に大別されるが、演習科目は全て第Ⅴ型にまとまった(分析対象者のB1とC1は同一人物のため、先の参加年度にあたるB1のデータを分析に用いた)。講義科目9件については、第Ⅰ~Ⅳ型に、それぞれ1~4名ずつに分かれた。講義科目については、履修登録者数に大きなばらつきが存在していたが(50名未満が4件、50~99名が2件、100名以上が3件)、履修登録者数の多寡と類型の間には連動性は見られなかった。同じく、分析対象教員の所属学部と類型の間にも連動性は見られなかった。授業サロンに参加する前の教員の授業スタイルは、主にこの5類型で理解可能であり、参加前のベースラインになっている。以下では、教員の授業運営と学生の学修結果のカテゴリーに主に着目し、各類型に該当する教員の授業スタイルの特徴について説明する。(1)教授型(第Ⅰ型):この類型には、講義科目の1名が該当していた。『3.交流』と『4.活動促進』に該当する視点が見られず、主に『2.教授』の視点により自らの授業を評価している点が特徴になっていた。そこで、「教授型」授業スタイルと命名した。なお、『6.学生の学修結果』では<⑰授業態度>の中の【消極的学修態度】の視点が見られたが、授業紹介シートの中で、その解消が授業の達成目標として挙げられることはなかった。(2)教授+練習型(第Ⅱ型):この類型には、講義科目の4名が該当していた。『2.教授』の視点をベースに置き、『3.交流』に該当する視点は見られないが、『4.活動促進』については<⑪反復練習促進>と、<中部大学教育研究No.20(2020)―24―表5授業の評価視点と授業スタイルの5類型

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