中部大学教育研究20
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5結果と考察5.1授業の評価視点のカテゴリー生成授業の評価視点のカテゴリーを生成するという目的1のために、GTAの手法に従い、授業サロン参加当時の提出資料である4.3で示したシート(a)~(c)の自由記述と、4.4で示したインタビュー逐語録(d)について、それぞれが単一の意味内容を持つように切片化した(例えば、「穴埋めのところに書き込ませた」など)。その結果、シート(a)で302、シート(b)で275、シート(c)で830、インタビューの遂語録(d)で692、全体で2099の切片を生成した。続いて、個々の切片に対して、文脈を考慮しながらオープン・コーディングを行い、44種類の概念を生成した(表2)。概念生成の際には、授業実践に関する既存の理論(e.g.,中井・中島,2005;田口他,2011)や、文部科学省の施策(中央教育審議会,2012)も参考にした。なお、授業の評価視点は、各概念が示す内容に着目して授業を評価しているかどうかを問うものであり、プラスの評価として言及される場合も、マイナスの評価として言及される場合もあった(具体例として、【消極的学修態度】には、「うるさくなってきた」と「私語は少なかった」が含まれていた)。そして、これらの44種類の概念に対して、意味の類似性に基づき選択的コーディングを行い、より抽象度の高い18種類の下位カテゴリーを生成した(表2)。なお、授業サロンは、FD研修の一環として行われているため、教員は自分の授業運営を改善し向上させることを目的にして参加している。そのため、18種類中13種類の下位カテゴリーは教員の授業運営に関するものだった。先述のように、現在の大学教育は、教授から学習への根本的な転換を迫られている。言い換えるなら、従来の教授学習パラダイムは、教員から学生へのコミュニケーションに重点を置いて授業を運営していたが、これからは、学生から教員、あるいは学生同士のコミュニケーションに比重を移していくことが求められている。そこで、本研究では、この13種類を、授業内コミュニケーション活動の視点から捉え直し、『1.基盤』『2.教授』『3.交流』『4.活動促進』の4つのカテゴリーを生成した(表3)。『2.教授』は教員から学生に向けたコミュニケーションの活性化、『3.交流』は教員と学生の双方向的なコミュニケーションの活性化、『4.活動促進』は学生から教員に向けたコミュニケーションの活性化をそれぞれ目的とする教員の活動から構成される。『2.教授』『3.交流』『4.活動促進』と進むにつれ、授業でのコミュニケーションの主体は教員から学生に移行していく。また、これらの3種類のコミュニケーションを効果的に進める上での基礎となる、教員の資質に関連する概念は、『1.基盤』のカテゴリーにまとめた。これら4つのカテゴリーの下には、意味の類似性に基づき、それぞれ、2~4種類の下位カテゴリーが含まれていた。残りの下位カテゴリーについては、先述の4つのカテゴリーとの関係性から、授業運営の選択を方向づける「条件」であることが示唆された。この条件に該当FD研修としての「授業サロン」の短期的・長期的な受講効果―21―表3授業の評価視点のカテゴリーおよび下位カテゴリー

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