中部大学教育研究20
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プの全メンバーのデータを分析する点と、授業サロンへの参加から実際に授業内容を変更するまでに必要な期間を考慮し(e.g.,沖他,2019)、①グループの全メンバーが2019年度時点で中部大学に在籍すること、②参加から1~5年が経過していること、③参加年度が3グループで異なること、の3点を条件にした。そして、上記の条件により選定されたグループのメンバー全員に対して、本研究の目的および倫理的配慮に関する説明と、授業サロン参加当時の提出資料の利用許可および個別インタビューへの協力依頼を行い、同意が得られた場合は、同意書への署名を求めた。この手続きにより分析対象者となった、A~Cの3グループ14名の教員の属性を表1に示した(1名はBとCに参加)。各グループは、協力依頼年度(2019年度)の、1、3、5年前に授業サロンに参加しており、14名中12名がそのとき1回のみの参加だった。4.3授業サロン受講時の提出資料授業サロン参加当時に、分析対象者が、FD研修を統括している中部大学大学企画部高等教育推進課(旧,中部大学大学教育研究センター)に提出した研修用資料の詳細は、以下のとおりである。(a)授業紹介シート:授業公開前に、授業で心がけている点を他のメンバーに紹介する資料であり、シートの上部には、「授業の基礎情報(授業実施日時、講義室、授業名、授業担当者、対象学科・学年、授業形式、受講者数)」が、統括組織によりあらかじめ記載されていた。授業を公開する教員は、「本授業で教員として心がけている点(授業内容、授業方法・教授法、教室環境・私語対策など)」と「特にコメントして欲しい点(あれば)」について、自由に記入する形式になっていた。(b)授業振り返りシート:授業公開後に、授業を公開した教員が自らの授業を振り返って作成する資料であり、「本日の授業について振り返って、次の点に関して思うところを自由に書いてください(授業内容、授業方法・教授法、教室環境・私語対策など、その他)」という教示に従い、自由に記入する形式になっていた。(c)授業見学コメントシート:他のメンバーの授業見学後に、見学教員が作成する資料であり、授業を公開した教員宛に、「授業方法でよかった点」と「授業方法で改善した方がよいと思われる点」と「その他、感想」を自由に記入する形式になっていた。4.4フォローアップ・インタビュー2019年7月に、表1の分析対象者に対して、対面で個別の半構造化面接を行った。面接は大学内の会議室で筆頭著者が行い、1人あたり面接時間は約30分だった。事前に承諾を得た上で面接内容をICレコーダーで記録した。また、スケジュールの都合がつかず、対面での面接が実施できなかった3名(A5、B4、C2)については、2020年4月にメールで質問を行った。面接では、①授業サロンで公開したものと同じ名称の授業科目について、現時点で思うこと(授業内容、授業方法・教授法、教室環境・私語対策など)、②授業を行うにあたって重視していること、③授業サロンで印象に残っていることや、参加したことで変わったことなどについて尋ねた。なお、同じ名称の科目を現在担当していない場合は、その後継科目や最も近い内容の科目を想定して回答するように求めた。ここでの対象者の回答内容を「(d)インタビューの遂語録」とした。4.5データ分析の手続き本研究では、質的研究法の1つであり、Glaser&Strauss(1967)によって開発されたグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)を、自由記述およびインタビューデータの分析に用いた。現在、GTAにはさまざまな分派が存在するが(e.g.,木下,2003;Strauss&Corbin,1998操・森岡訳2004)、社会的相互作用に関する領域で、データに基づく解釈を体系的な理論として提示することを目指している点では共通している。また、データを分析する際に体系的、帰納的、比較的アプローチをとる点、理論の実践的な意義を重視する点などがこの研究法の特徴になっている(Bryant&Charmaz,2012)。GTAは、体系的なアプローチによってデータの意味を掘り下げ、十分にFD研修としての「授業サロン」の短期的・長期的な受講効果―19―A14020144A24020141A35020141A44020141A53020141B16020164B24020161B33020161B44020161B53020161C16020185C23020181C33020181C44020181C54020181表1分析対象者の属性

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