中部大学教育研究20
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現在の潮流を踏まえた上で、大学教員の授業の評価視点をボトムアップ方式で検討し、評価視点のバリエーションと共通する評価の枠組みを検討する。(2)認知面および行動面の短期的・長期的変容:新たに生成した授業の評価視点の枠組みに基づき、授業サロンに参加した直後と数年後に生じる認識面および行動面の変容を検討する。(3)自他における評価視点の差異:自分の授業に対するリフレクションの内容とピア・コンサルテーションの内容に、どのような違いが見られるかについて検討する。4方法4.1授業サロンの概要(1)授業サロンの目的と受講者:本研究で取り上げる「授業サロン」は、お互いの授業を教材として、分野の異なる教員同士で、授業の考え方、学生の反応、問題点、工夫、改善案等について情報交換・意見交流をすることで、教育上の問題への対応や、授業改善のヒントを見出すことを目的として設計されたFD研修である。2008年度の「授業研究会(授業サロン)」の試行を経て、2009年度から正式にスタートし、2018年度末までに24グループ120名が参加した(複数回参加者を除く新規参加者数は88名。運営を円滑化するために、各回には1名以上の複数回参加者を含む)。参加者は、7学部および全学共通教育科目を担当する人間力創成総合教育センターに所属する専任教員であり、中部大学で学部の授業を1科目以上担当していることが参加の条件になる。中部大学の他のFD研修と同様に、参加は強制ではなく教員の自由意思による。(2)授業サロンの特徴:授業サロンの特徴としては、①専門分野の異なる教員によるグループ構成、②授業内容ではなく授業運営に着目した見学、③自分自身の振り返りを促す機会の提供、④ピア・コンサルテーションの実施、⑤教員間のFDネットワークの構築、⑥研修での体験を重視の6点が挙げられる。①②⑤の特徴は、中部大学が1キャンパスに多様な学部を置く総合大学であることを最大限に活かし、文理の壁を越えて他学部等の教員と1つのグループを構成することで、視点の多様化と教員ネットワークの拡充を目指していることに由来する。③④の特徴は、授業サロンがリフレクションおよびグループメンバーに対するピア・コンサルテーションを、授業改善のヒントを見出す両輪として活用していることに関連する。⑥の特徴は、授業サロンが情報提供を主目的とする情報提供型FD研修ではなく、受講者に対して高い参加性を求めるトレーニング提供型FD研修の1つとして位置づけられていることに関連する。(3)授業サロンの進め方と参加時の提出課題:授業サロンの進め方と参加時の提出課題を時間軸に沿って整理したものを図1に示した。授業サロンに参加する教員は5名で1グループを構成し、事前に30分程度の顔合わせを行う。また、自分の担当授業の中からグループメンバーに公開する1コマを決定し全メンバーの顔合わせ後、相互の授業見学の開始前に「(a)授業紹介シート(自分の授業用)」に記入する。(a)は、他のメンバーに共有される。その後、自分の授業のグループ内公開(1コマ分)とメンバーの授業見学(1コマ分×4回)を体験する。グループ内のメンバーに公開された授業は、全て教室後方から撮影され、DVDに録画される。見学と公開のどちらが先になるかは、自分が設定した授業公開日のスケジュールによって変わる。そして、メンバーに公開された自分の授業の録画を視聴した後、自分の授業への感想を「(b)授業振り返りシート」に記入する。他のメンバーが行った授業への感想は、授業見学後に、「(c)授業見学コメントシート」に記入する。スケジュールが合わず、直接見学できなかったメンバーの授業については、録画されたDVDを視聴する。(b)と(c)は他のメンバーと共有される。全ての見学が終わった後、全員で、1時間程度の情報交換・意見交流を行う。4.2分析対象者と依頼方法本研究では、中部大学の専任教員で、2008年~2018年度までに実施された授業サロンに参加した24グループの中から3グループを選定し、グループ内の全メンバーに調査を依頼した。グループ選定の際には、グルー中部大学教育研究No.20(2020)―18―(c)(b)(a)図1授業サロンの進め方と参加時の提出課題

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