中部大学教育研究20
17/168

ている大学は382校で、FD活動を実施している大学のほぼ半数を占めていたが、2018年には546校、FD活動実施校の7割を超える水準にまで増加している。実に数多くの教員がなんらかの形でFD活動に従事していることがわかる。そのFDに関する諸活動の中で「教員相互の授業参観」を実施する大学は微増、FD活動実施校の5割強の水準で推移している。「教員相互の授業評価」を実施する大学は、しばらく17%前後の水準で推移していたが、最近ではようやく20%を上回るようになっている。「教育方法を改善するためのワークショップや授業検討会」を開催する大学の数に大きな変化はないが、比率にしておよそ48%と、比較的高い水準で上下している。伸長著しいのは「アクティブ・ラーニングを推進するためのワークショップまたは授業検討会」の開催校で、2011年度に149校(19.5%)だったものが2018年には293校(38.5%)へと倍増している。この項目はアクティブ・ラーニングの推進を目的としているという点で学習パラダイム的な意義のあることを認められるが、他の項目と同様、教員集団の中で閉じていると考えるのが自然であり、学生を「巻き込んだ」ものにはなっていないと考えられる。これに対して学生との関わりがデータとして現れるのは授業評価(アンケート)(以後、授業評価と略記)である。文部科学省が発表しているデータをもとに「授業評価に関する特徴的な取組」について、2011年度から2018年度にかけての推移を表5にまとめた。学生による授業評価の結果を組織的に検討し、授業内容等に反映する機会を設けている大学の数は2011年には368校であったが、2018年には517校と、約1.4倍に増加している。しかしこの活動に学生が関与しているか否かは不明である。学生との関わりが明らかなのは、表5の表頭②から⑥に該当する項目である。例えば「学生自治会から意見を聞く」では、2018年度における実施校数は2011年度のほぼ1.5倍、「学生を教育改善委員として任命している」大学は、全体に占める構成比は低いものの4.8倍に増え、「学生が課外活動で教育改善活動に参加している」大学は1.8倍、「学生企画型もしくは学生が参加する授業運営委員会を置く授業科目を開設している」大学は1.4倍へと、それぞれ増加している。また、⑥の「FDに学生が参加している」大学については、2011年度から2018年度にかけて1.3倍の増加が見られる10)。いずれの項目においても、実施校がほぼ安定的に増加していることから、授業評価に関しては学生の関与する機会が増していると考えられる。とはいえ、⑥に見るように学生のFD活動への参加が②から⑤とは別に立項されていることから、両者は一線を画したものとして捉えなければならない。このように既存の数値データからは、FDの活動項目にアクティブ・ラーニングを取り込む大学、授業評試論学習パラダイムにおける学生とFDの関係を考える―7―表5授業評価に関する特徴的な取組*文部科学省のデータにおける表頭項目の記載は以下。①学生による授業評価の結果を授業改善に反映させる組織的な取組。のちに、「授業アンケートの結果を組織的に検討し、授業内容等に反映する機会を設けている。」②大学の授業に関し、学生自治会からの意見を聞く機会を設けている。③学生を教育改善委員として任命している。④学生が課外活動で教育改善活動に参加している。⑤学生企画型もしくは学生が参加する授業運営委員会を置く授業科目を開設している。⑥FDに学生が参加している。**2011年度の各項目の構成比は論者が試算したものである。***表4、表5ともにhttps://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/005.htmを参照。

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る