中部大学教育研究20
151/168

公的なヘルスケア施設である。戦場に行った、行っていないに関わらず、一度でも軍隊の制服に袖を通したことがあれば施設を利用する資格があるそうだ。軍隊をリタイアする理由は様々であるが、戦場での負傷で体の一部や機能を失ってしまう人や、トラウマを抱える人も多いそうだ。戦場では爆弾の爆風などで視力を失ってしまう軍人も多いようで、盲目でも自立ができるような訓練施設など、失った機能を補うためのケアや設備も充実していた。また、トラウマにより閉鎖空間が苦手な患者のために院内はガラス張りで外の景色が眺められるなど、閉塞感の無いような造りが意識されていた(写真3)。FisherHouseはVeteranAffairsの敷地内にある入院患者の家族が無料で宿泊できる施設である。建設業を営むFisher氏が建設・寄贈したもので、全米で72ヶ所建設されている。館内は高級ゲストハウスのようにゆったりとしており、それはまるでインテリアの雑誌で見るような素敵な空間であった。職員の給料以外、例えば食料や洗濯洗剤などの諸経費は全て寄付で運営される施設である。こういった安心してリラックスできるような豊かな空間が、家族が患者の元に笑顔で通うためにどれほど効果的だろうか、と感激したと同時にアメリカの寄付文化を肌で感じた施設であった。<9月4日>3日目午前からいよいよ英語クラスが開始した。教材も本プログラムのために作成されたものであった。クラスごとに少し内容は異なるが、あいさつの仕方をフレーズだけでなく、アイコンタクトや握手の力強さなどのボディランゲージも含め実践してみたり、午後からの施設訪問に使えるフレーズを教えてもらったり、学生たちがすぐに実践・使用できるような実用的な内容がたくさん盛り込まれていた(写真4)。当初、参加者を10名程度と見越して1クラスの予定だったが、参加者が2倍以上となったため、研修校にリクエストして事前に受験したCASECのレベルによって2クラス編成としてもらったことがよかった。午後は高齢者施設のBroadwayby-the-seaNursingHomeに市営バスを使って移動し、訪問した。ここは治療や看護が必要な、日常生活で自立が難しい人々が暮らす施設であった。ほとんどの入居者は高齢者であるが、高齢者だけに限らず、40歳代からの入居者がいた。看護師と看護助手で入所者の日々の生活援助や、必要であれば医師の指示のもと点滴などの治療も行う。入居者の部屋の入り口には各入居者の名札があり、たまに名前の横に星のシールがついていた。学生が星は何の目印か質問したところ、「Starproject」という転倒予防プログラムが適応されている入居者であるという説明であった。入居者の尊厳を損なわないように、一見、何の表示かわからないように配慮しているのだと教えてくれた。学生たちはこのような工夫で入居者の安全と尊厳を同時に守る工夫を知ると同時に、日本はどうなんだろうと、秋から始まる応用臨地実習への新たな視点を見つけたようであった。施設の見学後、学生は入所者と色紙のリースを作成ロサンゼルス看護研修―133―写真2キャンパス内の“GOBEACH”のモニュメント写真3VeteranAffairs(中央は現地在住の通訳者ジュンさん)写真4身体部位を付箋で貼って医療英語を体感

元のページ  ../index.html#151

このブックを見る