中部大学教育研究20
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1はじめに「看護海外セミナー」は保健看護学科の3・4年次秋学期の選択科目(2単位)であり、海外での看護研修はその一環として、位置づけられている。2009~2011年はアメリカワシントンD.C.、2013~2014年はニュージーランドオークランド、2015~2016年は同国のマヌカウで研修を行い、毎年10~17名の参加があった。しかし、2017~2018年は催行人数の10名に満たず、見送りとなっていた。そこで、2019年は研修国、研修校を変更し、訪問先だけでなく英語研修プログラムの刷新をはかったところ、3年生20名の参加および科目履修となった。本報では、この新しいプログラムの事前準備から現地での研修の様子を報告する。2「看護海外セミナー」の主旨本科目では、海外の看護教育機関への訪問、保健医療福祉施設への視察等を体験する。また、現地での活動に必要な医療英語や基本的な英会話について、事前学習および現地で学習する。これらを通して、研修国と自国の医療、看護の基盤となっている価値観や文化について考え、価値観や文化を尊重した看護の重要性について、学生自らが学ぶ機会としている。3事前準備前述の主旨に沿った目標到達を図るために、プログラムの再構築と事前指導の充実を図った。3.1研修校の選定と研修プログラムの再構築2016年度までのニュージーランドは研修校やホームステイの受け入れは良好であった。しかし、研修時期である8月末~9月初旬は、ニュージーランドは冬から春への季節の変わり目で天候も不順であり、研修校は春休み期間であるため、現地の学生は少なかった。そこで、看護研修留学のコーディネーターに相談し、他国で定評のある研修校を紹介してもらった。本学科の審議を経て、アメリカロサンゼルスのAmericanLanguageInstituteatCaliforniaStateUniversity,LongBeach(CSULB)に変更した。コーディネーターを通して交渉した結果、出産施設から高齢者施設、退役軍人のための施設などバラエティに富んだ現地の医療施設を確保でき、CSULBには本学科の学生のための英語クラスを開設してもらうことができた。本学科の1学年定員は100名であるが、3年生20名から参加申込があり、全員が指導教授の所見書で「お墨付き」をいただいて参加した。研修地やプログラムの魅力だけでなく、「中部大学海外留学・研修奨学金制度短期研修プログラム」として承認されたことも応募者増の要因だったと思う。3.2事前学習~CASEC受験とATRCALLBRIX本研修前後のスケジュールを表1に示す。参加学生は提示された課題に取り組み、訪問国の文化や保健医療福祉制度及び看護制度について学んだ。同時に、ディスカッションができるように自国の文化や医療制度を英語で紹介する課題にも取り組ませた。英語の事前学習として、従来からATRCALLBRIX(学内インターネット上の英語学習)に取組み、各自の英語スキルアップを図っていたが、語学教育センター(当時)の小栗成子教授から推奨があり、CASEC(ComputerizedAssessmentSystemforEnglishCommunication)を参加学生全員と引率教員も受験した。本科目の目的および成績評価には語学力自体は含まれていないが、学生自身と引率教員が学生の英語でのコミュニケーション能力を客観的に把握しておくことは、現地での安全確保や研修施設・ホームステイ先での配慮のために有用であった。また、海外研修を単なる海外旅行で終わらせないためにも、研修前の受験は学生の学習意欲につながった。筆者らも小栗教授から「引率可」のお言葉をいただき、安堵した。このほか、教員が作成した事前課題として、医療英語(身体の部位、症状、治療・薬剤)、日常英会話(LAのローカルフードなども含む)、自己紹介があった。とくに自己紹介は、学生がホストファミリーと馴染めるように、教員が添削・助言し、練習を促した。―131―ロサンゼルス看護研修-現地医療施設の見学と研修プログラムの新たな構築-横手直美*1・荒川尚子*2*1生命健康科学部保健看護学科准教授*2生命健康科学部保健看護学科講師

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