中部大学教育研究20
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事や特別支援学校に関する知識が学べたか」などについての聴き取り調査を行った(古市・伊藤,2019)。学生たちは、それぞれに「教職インターンシップ」における学びを実感していることがわかり、その意義や成果を確認することができた。しかし、どのような点において成果が得られたのか、特別支援学校におけるインターンシップ特有の意義や課題は何か、などについての詳細な検討までには至らなかった。そこで、今年度のふりかえり調査では、「教職インターンシップ」の目的に関するものと自分自身の態度や理解の変容に関するものとに調査項目を分け、学生自身がそれぞれの項目に対する達成度を自己評価する調査を実施し、その結果を分析・検討することにした。2.2.1調査方法1)対象学生2019年度の特別支援学校教職課程履修生7名2)実施期間2020年8月19日から8月23日まで3)配付回収GoogleSuiteforEducationに含まれるClassroom内に回答フォームを作成し、学生に通知することで配布した。学生が回答フォームに入力し、その後送信してもらう方法でClassroom内で回収した。4)倫理的配慮学生が回答を始める際に、回答内容を匿名化したうえで公表することへの同意を得た。また、回答結果を集約した形で、「教育実習指導」の授業内で学生にフィードバックし、「教職インターンシップ」のふりかえりを行う。2.2.2ふりかえり調査の観点及び項目2018年度に「教職インターンシップ」に参加した学生の聴き取り調査や活動報告書から、「教職インターンシップの意義」と「活動への参加による学生の良い変化」を確認することができた(古市・伊藤,2019)。2019年度は「教職インターンシップの目的」及び「自分自身の態度や理解の変容」の2つの観点から、それぞれの観点に属する項目を以下のように作成し、調査を行った。1)「教職インターンシップの目的」の項目「教職インターンシップの目的」に関する項目は、峯村ら(2019)が、2018年に教員養成課程を設置する大学を対象に行った「学校を体験する」活動の調査のうち「科目の目的」の項目をもとに、学生向けの質問項目に作成し直した。調査では、それぞれの項目の内容について学生がどれほど達成したかを5段階(5とてもそう思う、4ややそう思う、3どちらともいえない、2あまり思わない、1全く思わない)で回答する方式とした。さらに、達成度の高かった(5段階のうち4または5と回答した)項目については、そう思った具体的な場面や理由の記述を求めた。「教職インターンシップの目的」に関する回答項目は、ア.教師の意味や教師として働くことの意義が理解できた、イ.学校における教師の役割に対する理解が深まった、ウ.教師の職務全般に対する理解が深まった、エ.教師が行う児童・生徒指導に対する理解が深まった、オ.児童・生徒理解が深まった、カ.学級経営に関する理解が深まった、キ.特別活動に対する理解が深まった、ク.教科指導に対する理解が深まった、ケ.実践的な指導力を醸成することができた、コ.学校現場の雰囲気を感じることができた、サ.この実習で体験したことを他の教職科目で活用することができた、シ.教育実習に接続する活動として学校現場をあらかじめ理解できた、ス.自らの教員としての適格性を把握する機会となった、セ.地域や保護者との連携の重要性を理解できた、の14項目である。2)「自分自身の態度や理解の変容」の項目2018年度に「教職インターンシップ」に参加した学生は、教職インターンシップの意義にかかわることだけでなく、「一人ひとりにじっくり向き合える指導にあこがれを感じた」「一人ひとりと真摯にかかわることで、発話ができない子どもが何を思っているのか、考えているのかわかるようになる」「困っていることをすぐに支援することは優しさではないことがわかった」など、自分自身の考え方や態度、子ども達への理解の変容について述べていた(古市・伊藤,2019)。本稿では、この視点についても、ふりかえり調査の項目を設定し、学生が自分自身の態度や理解の変容をどのように捉えているのかについて、検討することにした。項目は、峯村ら(2019)の調査のうち「目的以外でもたらしている成果」として作成された11項目をもとに、a.児童・生徒との接し方や児童・生徒と接する際の態度、b.礼儀やマナーなどの態度、c.気持ちの持ち方など、情緒面、d.教師像の具体化など、キャリア意識、e.気の配り方、目の向け方など、状況把握しようとする態度、f.子どもの主体性の尊重など「教える」ばかりではないという意識、g.体力面・精神面など、児童・生徒の心身上の大変さに対する理解、h.自分自身が児童・生徒であったときとの違いへの気づき、i.自分自身の不勉強に対する反省・学習への動機づけ、j.子どもともっと遊ぶ・話すなど、より積極的にかかわろうとする意欲、k.叱り方や注意の仕方など、ネガティブな面での接し方に対する理解、とした。各項目について、向上した(低下した)中部大学教育研究No.20(2020)―124―

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