中部大学教育研究20
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1はじめに学校現場の活動を体験させる「学校インターンシップ」(学校体験活動)は、2019年度から教職課程の科目として位置づけられるようになり、教育実習との役割分担を明確にしたうえでその一部として認められることとなった(文部科学省,2017)。以前から、「学校インターンシップ」は各大学で充実が図られてきており、その意義と成果は多くの報告・研究によって示されてきている。しかし、それらは小中学校教職課程に関するものが中心であり、特別支援学校教職課程に焦点を当てたものは見当たらない。特別支援学校教職課程における特別支援学校でのインターンシップ活動については、小中学校での活動とは異なる特有の意義や課題があると考えられるものの、ほとんど検討されてこなかった現状がある。特別支援学校教職課程の学生が教育実習前に障害のある子どもとかかわる体験をすることの効果や、教育現場での実践に対する学生のニーズは確認されてきた。田中ら(2009)が障害児教育専修の学部学生1年~4年生に「障害のある子どもとかかわるときに、障害のない子ども達に対する時とは異なる特別な技能(指導法やかかわり方など)を習得した機会」について調査したところ、9割以上の学生が「ボランティア活動を通して身についた」と回答しており、当学科の学生が主体となって定期的に開催しているボランティア活動がこれに当たると考えられた。また、船橋(2014)が特別支援学校教員養成課程の学部学生1年~4年生に行った授業や活動の要望についての調査では、「教育現場に関連する内容・実践」への学びのニーズが高いことが示され、特に3年生では全員が「教育現場に訪問して、実践経験を積むような授業が必要」と回答している。本学科では、特別支援学校教職課程の課外活動として、特別支援学校でインターンシップを行う「特別支援学校教職インターンシップ(以下、「教職インターンシップ」と略す)」を2017年度から行ってきている。古市・伊藤(2019)では、開始から3年間の「教職インターンシップ」活動の概要及び参加学生やインターンシップ受け入れ校の意見を報告するとともに、これらをもとに、「教職インターンシップ」の意義や課題を探った。その結果、教育職員免許法施行規則に規定する各事項について修得すべき資質能力を示した「大学が教職課程を編成するに当たり参考とする指針(教職課程コアカリキュラム)」(教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会,2017)において、「学校体験活動」の到達目標として示されているすべての観点をほぼ達成できていることや、参加学生に良い変化がみられることが確認できた。また、「教職インターンシップ」には、ボランティアや小中学校教職課程におけるインターンシップとは異なる特有の意義や成果がある可能性が示された。そこで本稿では、2019年度に「教職インターンシップ」に参加した学生のふりかえりから、特別支援学校教職課程における特別支援学校でのインターンシップに特有の意義と成果を検討する。2方法2.12019年度「教職インターンシップ」の概要2019年度の「教職インターンシップ」は、特別支援学校教職課程履修者7名を対象に実施した。時期と回数は、9月から12月までの火曜日のうち、実習校から指定された10回とし、実習先は、愛知県内特別支援学校(知的障害特別支援学校2校、肢体不自由特別支援学校3校)である。2017年度の開始から3年目となった2019年度は、受け入れ校の理解を得て手続きがスムーズに進み、7月中には事前打ち合わせが終了し、実習日時、回数の設定を行うことができた。学生の実習内容も授業補助や教材づくり、環境整備など学校の中の様々な業務を体験することができ、教育実習の前に「特別支援学校を体験する」という当初の目的をほぼ達成することができたと考えている。2.2ふりかえり調査の実施昨年度は、2018年度に「教職インターンシップ」を実施した学生を対象に、「教職インターンシップの経験は教育実習を行ううえで役に立ったか」、「教師の仕―123―「特別支援学校教職インターンシップ」の意義と課題-小学校における学校インターンシップとの比較から-古市真智子*1・伊藤佐奈美*2*1現代教育学部現代教育学科准教授*2現代教育学部現代教育学科教授

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