中部大学教育研究20
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4.考察4.1大学生の清涼飲料水摂取状況本研究では、清涼飲料水を「よく摂取する」学生は30.4%であった。2017年の本学の調査では、清涼飲料水の摂取頻度が「週に5日以上」と回答した学生は26.7%であったが6)、今回はそれを上回り、日常的に清涼飲料水を摂取する大学生が増加してきたと考えられる。摂取の種類と摂取量は、多い順に「お茶」「ミネラルウォーター」「炭酸飲料」「果汁入り飲料」であった。「お茶」「ミネラルウォーター」の摂取については、2000年頃から大学生がよく飲む物として意識されているという報告があるが9)10)、近年は熱中症予防のための水分摂取という点からも摂取量が多くなっていると考えられる。「よく摂取する」方に摂取量が多かったのは「コーヒー加糖ミルク入り」「炭酸飲料」「果汁入り飲料」「野菜ジュース」「スポーツ飲料」であり、これらの飲料水を摂取することは糖質やカロリーの過剰摂取につながる可能性が高い。大学生が清涼飲料水購入時に最も重視する事柄は「味」「価格」「その時の気分」であり、カロリーを重視することはほとんどなかった。栄養士養成課程の学生を対象にした調査では、カロリーは「味」「価格」より重視はしていなかった7)。本研究では、カロリーを気にすることに対して意識は高い得点ではなかったことからも依然として大学生は清涼飲料水に対しての認識が低いのではないかと考える。4.2大学生の清涼飲料水摂取状況と生活習慣などの関係「よく摂取している」学生と「あまり摂取しない」学生の生活習慣との関係を検討したところ、「部活動の有無」「朝食時の清涼飲料摂取日数」「朝食摂取日数」「摂取量の変化」「運動日数」「運動不足の認識」「日中の眠気」の7項目に有意な差がみられた。さらに、これらの要因について多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、清涼飲料水摂取と関連を示したものは「朝食時の清涼飲料摂取日数」「摂取量の変化」であることが明らかになった。部活動に入っている学生や運動日数が多い学生、さらに運動不足をまったく感じていない学生の方が清涼飲料水をよく摂取していることがわかった。活動的でよく身体を動かしている学生は清涼飲料水の摂取量が増加すると考えられる。「日中の眠気」については、清涼飲料水摂取による血糖値上昇や眠気が起こる関係について詳細な調査をしていくことが望まれる。朝食時に清涼飲料水を週5日以上摂取する学生の93.3%が清涼飲料水を「よく摂取する」と回答しており、朝食時に清涼飲料水を摂取していることが考えられ、食事時に清涼飲料水を摂取することが習慣化されていると推察された。本研究では、朝食時に清涼飲料水を多く摂取する学生と「コーヒー等加糖ミルク入り」「炭酸飲料」「果汁入り飲料」「野菜ジュース」「スポーツ飲料」の摂取量とは関係がなかったが(表6)、これらは糖質・カロリーの高い飲料水であることから朝食時の清涼飲料水摂取には注意が必要である。大学に入ってからの清涼飲料水摂取量の変化に関しては、「増加した」と感じている学生のうち、50.0%が清涼飲料水をよく摂取しており、「変わらない」「減った」と感じている学生よりも多かった。本研究では、対象が1年生と2年生であり、大学生になって生活環境が変化したり、食生活の自由度が増したりすることが全体的な摂取量増加につながっている可能性がある。4.3今後の課題本学は、清涼飲料水が自動販売機約50台、コンビニエンスストア3店で販売され、容易に購入できる環境である。今回の調査の対象者は、清涼飲料水の栄養成分表示やカロリーを気にすることに対して高い意識があるとはいえなかった。折しも2015年に制定された食品表示法は、経過措置期間を経て2020年4月1日から完全施行されており、原則として全ての一般加工食品等に栄養成分表示が行われることとなっている11)。これらの開示情報をよりよい食生活・生活習慣形成につなげるためには、消費者の理解と利用が必須である。今回は清涼飲料水の入手方法を質問していないので不明であるが、自動販売機で購入していれば栄養成分、カロリーを見ることができない状況である。今後は、多くの学生が利用すると思われる自動販売機に清涼飲料水の情報を提供していくことが重要である。あわせて、大学生になって清涼飲料水摂取が増加していることから、新入生時に清涼飲料水の成分や摂取方法に関する教育指導を行うことは、清涼飲料水への認識度上昇とその後の好ましい生活習慣獲得に有効な方策と考える。大学生の清涼飲料水摂取状況と生活習慣との関連―119―表6清涼飲料水摂取量と生活習慣等との関係

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