中部大学教育研究20
131/168

1はじめに清涼飲料水は、食品衛生法の一部を改正する法律などの施行についての通達(昭和32年9月)では、「乳酸菌飲料、乳及び乳酸品を除く酒精分1容量パーセント未満を含有する飲料をいうもの」と示されている1)。全国清涼飲料連合会の調査によると、清涼飲料品目は炭酸飲料、コーヒー飲料等、果実飲料等の種類に分かれ、2019年の生産量は、炭酸飲料が最も多く次いでミネラルウォーター、コーヒー飲料等であった。また、年間の清涼飲料水消費量は国民1人あたりの換算で、2008年は約140、2019年は約180と年々増加している2)。コンビニエンスストアや自動販売機の普及による入手の容易さ、熱中症予防や健康志向の動向からも清涼飲料水摂取は今後も増加していくものと推測される。清涼飲料水の過剰摂取は、肥満やむし歯を増加させ、虚血性心疾患や糖尿病などの生活習慣病発症リスクとなることから、WHO(2016年)が糖分摂取を減らすために糖分の多い飲料水に課税することを呼びかけるなど、摂取に対する対策を講じることが求められている3)-5)。本学学生を対象にした調査(2017年)では、清涼飲料水を週5回以上の摂取しているものは26.7%であったことから、本学学生も日常的に清涼飲料水を摂取していることがわかっている6)。また、大学生を対象にした先行研究では「男子学生は炭酸飲料、コーヒー飲料摂取が多い」「嗜好性を重視している」「健康状態が良くない人ほど摂取量が多い」などが明らかにされている7)8)。しかし、清涼飲料水摂取状況と生活習慣との関係については明らかにされていない。これらのことから、本研究では大学生の清涼飲料水摂取状況を把握し、清涼飲料水への意識や生活習慣との関係を明らかにすることを目的とした。さらに、本研究の結果は大学生が在学中によりよい生活習慣を身につけることができるよう、一次予防を重視した教育指導の資料となると考えている。2調査対象者および調査方法2.1対象者2020年6~7月、本学学部生372名を対象として無記名自記式質問紙調査を行った。回収数は360名(回収率96.8%)であった。無回答、学年、性別に記入漏れがあるもの、清涼飲料水の摂取状況に回答がないものを除き、339名(有効回答率94.2%)を分析対象とした。2.2調査方法対象者に対して文書と口頭で調査の概要を説明した後、調査票を配付し回答の有無にかかわらず回収した。―115―*1生命健康科学部スポーツ保健医療学科講師*2中部学院大学看護リハビリテーション学部看護学科教授*3応用生物学部食品栄養科学学科教授*4健康増進センター/生命健康科学部スポーツ保健医療学科教授大学生の清涼飲料水摂取状況と生活習慣との関連飯尾洋子*1・藤丸郁代*2・堂前純子*3・近藤孝晴*4要旨本研究は、大学生の清涼飲料水摂取状況を把握し、生活習慣との関係を明らかにすることを目的とした。339名のうち、週5日以上清涼飲料水を摂取する学生、つまり「よく摂取する」ものは、103名(30.4%)であった。「よく摂取する」ものは「あまり摂取しない」ものに比べて「部活動をしている」「朝食時に清涼飲料水を摂取する」「朝食の日数が多い」「大学生になってから清涼飲料水摂取量が増加した」「運動頻度が多い」「運動不足と感じていない」「日中眠気がする」の生活習慣に有意差があった。次に、これらの7つの項目について多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、「よく摂取するもの」に影響与えていた生活習慣は「朝食時に清涼飲料水を摂取する」「大学生になってから清涼飲料水摂取量が増加した」であった。大学生になってから摂取が増えていることの影響の大きさから、大学生活において清涼飲料水摂取に関する情報提供や生活習慣に対する教育の必要性が示唆された。キーワード清涼飲料水摂取状況、大学生、生活習慣

元のページ  ../index.html#131

このブックを見る