中部大学教育研究20
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なかったか”ではない向上心を擽ってくれたと思う。・加算方式の評価は、自分自身のモチベーションが上がったので、次も加算してもらえるように頑張ろうと思えてよかったです。・書いた内容を満点よりも多い点数をつけてもらえると、とても嬉しかったので毎週評価を見るのが楽しみでした!・満点を頂いても十分嬉しかったのに、さらに追加点を頂くと、次回へのモチベーションが上がった。学生の意欲的な授業の取り組みに加算方式は有効だと思う。4.10感情を揺さぶる教材の使用定着率が高い学習方法は、アクティブ・ラーニングとしての討論や体験学習を伴ったものだろうが、同様に感動したり、驚いたり、恥ずかしい想いをして覚えたものも記憶に残ることが多い。単語なども努力をした記憶はないが、無意識のうちに記憶しているものは、一定の状況の中で、感動や恥ずかしい想いを伴って学んだものであることが多い。そこで、認知レベルではなく、この感情のレベルで学習者に訴える教材作りを心がけた。異文化コミュニケーションのように、学習者に「態度」や「行動」の変容を期待する授業では、感情を揺さぶるような教材づくりが不可欠である。具体的には、「あ~、なるほど」とうなずける発見学習、海外で大変な想いをした本学先輩の実話、TEDなど深く考えさせられるプレゼン、ステレオタイプや偏見に関するドキュメンタリーなどを多用した。これを課題で、自らの体験などと絡み合わせて考えてもらうことで、より深い感情のレベルの学びがおこることを期待したのである。学習者からのコメントは上記の4.5や4.6と重なる部分が多いのでここでは省略するが、「考えさせられる深い授業でした」「本当によい影響をうけました」「物事の考え方が変わりました」「深く感動し、感銘を受けた」「人はこんなにも変わるのかと感動した」「「自分から学ぶ」を大切に過ごしていきます」「一人の人間としてもっと成長できるように頑張りたい」などという文言が見受けられ、態度や行動の変化があったことを示唆している。これは従来の知識伝達型の授業では不可能なことである。5課題と解決に向けて手探りで始めた授業形態であったが受講者からは想像を超える好評価を得て、苦労が報われた想いである。ただし、課題も多い。最も大きな課題は、オンデマンド型の授業であるため、素早い質疑応答が難しかったことだ。学生からのコメントでも、自分の課題が的を射ているかどうか不安で、課題執筆中に教員に質問をしたかったというものがあった。1年生全員がLINEで筆者(と多くの英語英米文化学科の教員)や学生同士ともつながっていたため、その気になれば質問も可能であったろうが、教員に個人的に質問をするのは気後れしたのかもしれない。もちろんLMS上でも教員に質問はできたはずだが、電子メールと同じで、タイムラップが足かせとなった可能性が考えられる。オンデマンド型の授業に加えて、必要に応じて適切な時間に希望者だけでも同時進行型の短い補足的授業を設けることにより、これは解決したのかもしれない。だが、実際にそれだけの手間を掛けるかどうかは、またコストベネフィットを考えなければならない。また、学生からのコメントで他に改善点として挙げられたのは、学生同士の意見交換の場が十分に確保されていなかったことだ。これもLINEグループを利用すれば可能であろうが、70名以上の仲間が一斉に読むとなると学生たちは躊躇しがちである。ZoomやGoogleClassroomなどで小部屋を用意すれは少人数での議論が可能だが、このような形態の授業を受けた学生からの報告では、学生同士だと発言が少なく、気まずい時間が流れるだけだったという指摘もあるから難しい。さらに、授業の活性化という意味で改善点を挙げれば、さらに学生中心、学生参加型のスライド作りや学習活動を含める努力をすべきだったというものがある。上記のようにいくつか授業活性化の工夫はしたが、全てのスライドが学習者自身で調べて、周囲の他の人と議論し、さらに自ら情報収集したり、調査するような形式であったわけではない。その半数近いページはまだまだ情報提供型のスライドであった。1学期間の授業を終えた今、さらなる授業の活性化に向けてさらに工夫し、改善することは可能かと思われる。以下は受講者からの改善に対するコメントの主なものである。・他の人が授業に関する内容でどんな経験をしたことがあるのかを聞いてみたかったなと思いました。・また一緒に勉強する友(ライバル的存在)がいないので一人で努力する才能のある人しか勉強が進まないと思います。・友達と意見の交流ができないことだと思います。意見の交流をすることで自分とは違った角度で物事を見られて新しいことに気づくきっかけになるかもしれない。でも、Zoomでグループを作られても直接話したことがないので気まずいかもしれない。・自分一人で授業を受けるため自分に甘えが出てしまうこともあったり、話す友達もいないため「何しているのだろう?」と感じ、寂しくなったりすること中部大学教育研究No.20(2020)―110―

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