中部大学教育研究20
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4活性化の工夫とその評価主な授業の活性化の具体的な工夫は以下の10項目に集約される。1)授業スライドは学習者が作る2)音声を添える3)身近な事例で「有意味学習」4)優れた外部リソースを活用5)教え過ぎない(自分でまとめ、考える)6)課題は全て応用問題7)体験する、他の人に教える8)素早いフィードバック9)加算方式の評価10)感情を揺さぶる教材の使用以下、スライドの例も示しながら具体的に説明したい。4.1授業スライドは学習者が作る「自己決定理論」(Deci&Ryan1985)に従えば、学修の自律性は非常に重要な学修の継続性に関わる要素である。そこで授業用のスライドは筆者ではなく、学習者自身に作ってもらうこととした。学習者らをいくつかのグループにわけ、そのグループ内で相談して、春学期の担当トピックを選ばせた。そして、そのトピックについて、担当グループに責任を持って授業用のスライドを作成してもらうこととした。一年生であり、協働作業は慣れていないことは想像できたが、筆者が修正すればいいだけの話である。提出されたスライドの質よりも、彼らが授業の教材づくりに関わること自体が動機付けに繋がると考えた。予想通り、提出されたスライド教材は、ほぼ全面的に書き直す必要があったが、以下のようなコメントから、この方法は意義はあったと考えられる。・クラスメイトとの共同作業により、協調性の向上にも繋がった。・毎回の授業で使用するパワーポイントも、自分たちで作成したものなので、達成感があった。・自分が作成したスライドが授業で出てきたときはちょっと興奮した。・他の人が上手にまとめていたので驚いた。4.2音声を添えるスライドに筆者の音声を添えたのは非常に好評であった。スライドで要点だけを説明もなしに提示されても、情報の厚みや幅が無いため、理解に至らないことが多い。一見無駄に思える授業中の小さなコメントや関連したエピソードなどが理解を助けてくれるのである。実際、学生からの授業評価に関するコメントでもっとも多かったのは、この音声添付についてである。以下のスライドのように、筆者の解説音声ファイルを画面上に貼り付けた。学習者はこのスピーカのアイコンをクリックすることにより、このスライドに関する解説を聞くことができる仕組みになっている。学生からのコメントには、以下のようなものが多く、この音声が対面授業に近い臨場感を生み出していたようだ。・音声が付いていたので「対面授業」のようで分かりやすかった。・音声がある方が聞きそびれる心配もなくしっかり学べました。音声を添付した形であれば、直接授業に近いものだったと感じます。事例や体験談があり理解しやすかった。・音声入りのパワーポイントで教えていただけることで自分のペースで進められるためメモを取りたい時は一時停止して、もう一度聞きたい時は巻き戻すなどができていました。・実際に先生が実体験なども交えながら説明してくださっている音声のおかげで、文章だけではわかりにくいものなどもわかりやすかった。4.3身近な事例で「有意味学習」添付する音声ファイルでの解説では、教科書の内容やスライドで提示している概要を繰り返さないように心がけた。スライドの内容をそのまま説明するのは情報の繰り返しであり、予習した学習者にとっては冗長な情報でしかない。音声で提供する情報は可能な限り要点と関連するエピソードや学習者に身近な例を取りあげ、彼らにとって「有意味学習」が成立するよう心がけた。例えばステレオタイプや偏見に関する授業では、それらが何であるかという定義より、具体的に学習者たちが抱くだろうステレオタイプや偏見などについて、音声で問いかけた上で、それについて事例を豊富に使って解説することとした。また、その事例やエピソードやスライドに登場する画像も、可能な限り学習者らと関係ある人や既知の物中部大学教育研究No.20(2020)―104―図1音声を加えたスライド

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