中部大学教育研究19
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「noonewillbeleftbehind(誰一人取り残さない)」を理念として、2030年までに貧困や飢餓の撲滅、健康や教育の改善、気候変動との闘いなど、世界の幅広い持続可能な開発課題に対する17の目標と169のターゲットを設定した。SDGsは開発途上国と先進国が一丸となって取り組むユニバーサルな目標である。3SDGsと看護SDGsの目標3は「すべての人に健康と福祉を」である。すなわち、「すべての人々の健康的な生活と福祉を促進する」ということである。看護職者は、個人・家族、集団、地域の健康を向上させる責務がある。そのため、健康に特化した目標3において看護職者が重要な役割を果たすことは明白である。看護の対象は疾病や障害の有無にかかわらず、すべての人々である。したがって、人々の生死に添い、成長・発達を促進し、生活を守る看護職者は、17の目標全体に見られる貧困、教育や環境など「健康の社会的決定要因」に介入が可能で、ほとんどの目標達成に影響を及ぼすことができると考える。4SDGsの教育看護学概論の研究授業として実施した「国際看護」の単元では、以下の8点について講義を行った。・国際看護とは何か・国際看護の対象は「すべての人々」であること・世界における健康問題と看護師の役割・国際協力の実施機関・MDGs・SDGs・開発途上国における青年海外協力隊の体験談・日本国内に在住する多様な文化を持つ人々への看護青年海外協力隊の体験談では、SDGs目標3に対する取り組みを説明した。例えば、医療職者が地域に出向いて実施する予防接種や出張診察、小学校で行う手洗いや歯磨き教室など一次予防を推進する活動について写真を使用して紹介した。その結果、授業後に記述させた「SDGs目標1~17に対して、あなたが取り組めることは何ですか」では、目標3に対する記述が多数を占めた。その内容は、「今は学生として、健康に関する知識をつけるための勉強をがんばる」「まずは、自分自身の健康を整える」などである。これらは、具体的な内容ではないが、授業の中で紹介した青年海外協力隊の体験談などが学生のエピソード記憶となり、保健看護学科1年生がSDGsを知り、各自が取り組めることは何かを考える機会となったのではないだろうか。2019年の108回看護師国家試験では、はじめてSDGsが出題された。これは、2030年のSDGs達成に向けて看護職者に大きな役割が期待されていることを示している。現在わが国が保健分野で世界のリーダーシップをとって取り組んでいるのは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(すべての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)や高齢化対策などである。これらの目標3に関連することを中心に、2030年のSDGs達成に向けて看護専門職者として人々にどのような介入ができるのか、本学の看護学生とともに具体的に実行に移せるレベルで検討することを続けていきたい。5おわりに中部大学ではSDGsに関する様々なイベントや講演が実施されている。また、多くのリーフレットなども手に入れることができる。SDGsが何かを知り、自分に何ができるかを考えた学生は、今後「SDGs」の文字が容易に目に飛び込んでくるであろう。中部大学で、SDGs達成のために何ができるかを何度も考えることによって、中部大学生がSDGsに具体的に取り組める人材に成長していけるのではないかと考える。参考文献中部大学国際ESD・SDGsセンター(2019):中部大学ESD通信Vol.30.学研教育総合研究所(2018):高校生白書Web版,高校生の日常生活・学習に関する調査.https://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/h201809/chapter11/02.html(閲覧日:2019年9月20日)国際看護師協会/日本看護協会訳(2017):看護師:主導する声持続可能な開発目標の達成.https://www.nurse.or.jp/nursing/international/icn/katsudo/pdf/2017.pdf(閲覧日:2019年9月20日)JICA国際協力機構:SDGs(持続可能な開発目標)とJICA.https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/index.html(閲覧日:2019年9月20日)外務省(2019):「持続可能な開発目標」(SDGs)について.https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/about_sdgs_summary.pdf(閲覧日:2019年9月20日)中部大学教育研究No.19(2019)―58―

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