中部大学教育研究19
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動指導者を目指す学生からは、物足りないとの意見も聞かれた。救急救命士を目指す学生においても、これまでスポーツに取り組んできた経験から「もっと体を動かす機会があるとよかった」との声も聞かれた。研修プログラムについては学生の意見を反映させながら、今後より満足度の高い研修となるよう検討を重ねていきたい。4帰国報告会帰国後、研修での学びを共有するため、帰国報告会を実施した。訪問場所ごとに参加学生全員をグループに分け、プレゼンテーション形式による報告を行った。学びの総まとめは4年生(参加時は3年生)が行った。救急救命士を目指す学生からは「日本と米国ではそれぞれの国にあった救急体制があることがわかった」「日本と米国の違いを知ることで、日本の救急医療体制を見つめ直すことができ、学んだことを今後現場で活かしていきたい」との発表があった。運動指導者を目指す学生からは、研修で学んだFMSを聴衆に体験してもらうなど発表に工夫を凝らしつつ、目的を持って指導を行うことが重要であること、多角的なものの見方を身につけるためぜひ留学にチャレンジしてほしいとのメッセージがあった。当日の参加者数はスポーツ保健医療学科学生129人、教員6人、合計135人であった。発表を聞いた学生からは「それぞれ学んだことや体験談などがわかりやすくて、何を学びに行くのかよく理解できた」「参加してみたいと思った」「興味はなかったが、発表を聞いてとても関心を持った」等々、海外研修に対する肯定的な感想が多く聞かれた。5医師・看護師からみた本研修内容本研修、とりわけ、ファイアーステーションでの救急蘇生実習は本学科学生たちにとって興味深く有意義なものであったと感じた。そこで医師の視点から感じたのは、医学的根拠に基づいた手技の習得の重要さである。また、その視点から、アスレチックトレーナー領域においても医学的根拠に基づいた実践の重要性を学び取ってくれたものと信じている。「患者は最悪の状況にいる。しかしそれを決して望んだ訳ではない。患者を最大限いたわること、患者の状態を安定させること、そのサポートができることがやりがいである」と、ロサンゼルス・チルドレンズ・ホスピタルのガイド担当看護師が話してくれた。これは看護師のみならず、多くの医療専門職にとっても共感できる部分ではないだろうか。学生にはこれから様々な経験を積み、医療専門職として何を大切にするのか、自分なりの価値観を築いてほしいこと、そしてそれをサポートするのが教員の役割であることを実感した海外研修であった。6救急救命士からみた本研修内容出場件数の増加に伴い、日本における自治体消防の救急隊員の負担を減らすため、2019年8月に厚生労働省は、病院に所属する救急救命士ら消防機関に属していない救急救命士が活動しやすくする方針で、病院の救急車を使った緊急性の低い転院搬送などを想定し、地域や病院への研修を始めるといった内容で、事実上消防機関に限られてきた救命士の活躍の場を消防以外にも拡大するという内容である。今後この動きはどんどん進んでいくことが予想され、これはアメリカで行われている民間の救急サービスにも似たものといえる。そういった動きが今後日本で広がりを見せる中、アメリカで最大規模の民間救急業務会社「AMR」の業務を見学できることは、日本の民間救急サービスにもアメリカと同じようなシステムで業務ができるかどうかといった、日本とアメリカの違いを見ることのできる良い機会であると考える。日本の民間救急サービスはまだこれから広がりをみせるなかで、日本に合った救急サービスとはどのようなサービスなのかを本場アメリカの救急体制を見学する中で考え、自治体消防だけではなく幅広い救急システムをこの海外研修で学べるのではないかと考える。日本国内においても救急需要の増加は止まらず、それに伴い救急出場件数も増加している。公的救急機関『MEDIC-ONE』が現場でトリアージを行い緊急性の低い傷病者は救急搬送の対象としておらず、民間救急機関『AMR』が搬送するシステムがある。緊急度・重症度の高い傷病者への救護が、救急要請した場所から直近の救急隊が対応できない問題が国内でも生じている。公的救急機関と民間救急機関のシステムがまだ実現していないのが現状である。日本とアメリカとの病院前救護体制の違いを学び、日本で抱えている問題をどのように検討していくかをこの海外研修で学べるスポーツ保健医療学科第二回海外短期研修を終えて―53―写真11帰国報告会での発表

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