中部大学教育研究19
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巻頭言大学における教育研究:発見・統合・応用・教育大学における教育は高等教育と呼ばれ、その使命は、初等・中等教育を受けた者が自ら選んだ学問の学びを通して、人間としての教養を身につけることでしょう。中部大学の前身である中部工業大学の時に、教育に関する実践記録、調査報告、統計を扱う『教育資料』第1号として刊行しました(1979年4月)。そして2000年4月に発足した大学教育研究センターのもとで、『教育資料』は第23号まで発行されました。その精神を受け継ぎ、教育に関する研究論稿、海外便り、研究ノートを加えて、2001年に『中部大学教育研究』が創刊されました。2019年4月には、学長直属の「大学企画室」を立ち上げました。そこに教育、研究、運営に関する情報を通して戦略計画策定をする「大学IR推進部」、学生・教員・職員の資質向上に資する企画をする「高等教育推進部」、自己点検・評価活動、全学的な評価システムを構築する「大学評価推進部」の3つの推進部を置きました。今回の『中部大学教育研究』第19号は、大学教育研究センターを受け継いだ高等教育推進部によっての刊行となりました。大学における教育研究の在り方を考えてみます。紀元前5世紀の奇跡といわれるように、中国で孔子、インドで釈迦、ギリシャでソクラテスというように地球上で同時に賢人が現れ、教育についても後世に影響を及ぼすことになります。中国古典の四書の一つ『大学』の中で「大学之道在明明徳」とあり、大学の道、つまり大学で学ぶべきこと、大いなる学問の道は、生まれながらの天から授かった徳を明らかにすることだというのです。一方、西洋で生まれたEducation,Universityの語源をみると、ラテン語でE+DUCATUS(導き出す)、UNI+VERSUS(変わり行くものを一つにする,全体を一つにする)という意味が込められています。こうした歴史的な意味あいも考慮して私は次のように考えています。高等教育機関における教育の本質と目的は、個人の天与の力を引き出すことであり、移り変わる世の中に対応できるように、各人が学習を生涯にわたって継続できるようにすることだと思うのです。そして大学人の在り方としては、アーネスト・ボイヤーの言葉を借りれば、研究という学びを通しての新しい知見の発見(discovery)、学問領域を統合(integration)することができる総合的な教養、学問を社会に結びつける応用(application)力、そして自分の専門の内容を伝える教育(teaching)力が求められることになると思います。『中部大学教育研究』は、今後の高等教育のあり方を考える、議論の場としてこれからも重要な役割を担っていきたいと思うところです。2019年12月中部大学学長石原修

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