中部大学教育研究19
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がす」というアクションを1段階挟むと、そこで一旦気持ちが切り替わり集中が途切れないという効果もある。ただし、もちろんこのような場合でも、一度他で効果があったからいつでもどこでもサイコロを使うのが良いというわけではない。いつ、どこで、どのように、どのくらいサイコロを使うかも含めて、インストラクションはデザインしなくてはならないものだからである。5教師の役割図6は、教材適用をしようとする際の英語教師の役割がどのようなサイクルで起きるかを、教材面のみに焦点を当てて表したものである。教師がまず授業プランニングをしようとする際考えるのは、足場かけや調整が必要かどうかの検討を含めた判断で、その判断に従って教材準備を行っていく。それを実践に移し、実践をしながら観察もしていく。さらにはその観察を元に用意し実践した教材が学習に適していたかどうか、学習効果があったかどうかを振り返ることになる。その振り返りを元に、また教師は次の授業をプランしていく。教師は授業のデザイナーである。ただテキストに沿ってページをめくって行くのであれば、オンライン教材や近年小学校でも注目を浴びている「AIティーチャー」に置き換えられる日も遠くないかもしれない。教師はすでに「人が人を教える」意義を考えなくてはならない時代になっている。AIティーチャーやe-Learning教材ではなく、なぜ人が必要なのか。人である教師にしかできないことは何なのか、教師は大きな問いを投げかけられている。6今後の課題大学の語学授業には何が求められているのだろう。授業は「単位を集める」場なのだろうか。それならば、どのような教材が使われ、どのような教師が授業をしても「単位さえ」出れば目標が達成されることになる。果たして、授業とはそうあるべきものなのだろうか。たとえば教材に注目してみる。語学の教材がペーパーレスになろうとしている世界の動きは、すぐ近くまで来ている。従来の紙ベースのテキストもデジタル図書に転向していく大手教材出版社も出て来ている。e-Learning教材は多様に開発されているので、学生も費用を惜しまなければ授業以外でどれだけでも語学を習得しようとすることができる。大学入試にも、読む・聞く・書く・話す4技能の英語評価が導入される動向がある。このような状況下で、大学の英語授業は、従来のままで良いのだろうか。どのような目標に向かってカリキュラムを構築し、どのようなインストラクションをデザインしていけば良いのだろうか。外部の教材も、学内ですでに導入されているものも含め、e-Learning教材でも学べること、あるいはe-Learning教材で学ぶことの方が適していることと対面授業とは、差別化を図る必要があるのではないだろうか。対面授業は「そこに集まる人たちで構成」されるものである。対面授業の時間を最大活用できるような、「出席する価値がある」「他では同じことは学べない」授業が、これからはますます求められるのではないだろうか。「その授業は本当に必要か?」「その授業はその形式で行うことが最善なのか?」を考え、英語教育をどこへ向かわせるのか検討すべき時期はすでに過ぎている。参考文献新井紀子(2018).『AIvs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社松村昌紀(2012).『タスクを活用した英語授業のデザイン』東京:大修館書店江利川春雄編著(2012).『協同学習を取り入れた英語授業のすすめ』東京:大修館書店山岸信義他編(2010).『英語授業デザインー学習空間づくりの教授法と実践』東京:大修館書店BakerM.,etal.Ed.(2013).AffectiveLearningTogether-Socialandemotionaldimensionsofcollaborativelearning.London.Routledge.D・rnyeiZ.(2001).MotivationalStrategiesintheLanguageClassroom.Cambridge:CambridgeUniversityPress.D・rnyeiZ.(2003).GroupDynamicsintheLanguageClassroom.Cambridge:CambridgeUniversityPress.D・rnyeiZ.andUshiodaE.(2011).Teachingand外国語としての英語力定着に向けた教材の適用化とインストラクショナルデザイン―21―図6Rolesofteachersinadaptation(Oguri&Allen2019)

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