中部大学教育研究19
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ている状況を想定し、発音やプロソディ以外に、ノンバーバルな要素も指導する機会である。徐々に学生が自信を持ち始めたら、「ハーフブラインド」への挑戦が開始される。ここからはモニターに映し出されるダイアログ(スクリプト)を見てもよいのは、学生A・Bいずれか一人のみと決められる。A・Bのうちどちらがスクリプトを見てもよいかの判断は、A・Bの発話の長さ・難易度で教師があらかじめ行う。たとえばAがスクリプトを見てもよいロールだとすると、Bはスクリプトが見えない場所に移動して対面させアクティビティを開始する。スクリプトを見てもよいAは、ダイアログのリード役となる。Aもスクリプトを見る頻度や回数を最小限にしながら対話をリードし、Bはスクリプト通りの文言でなくとも、内容がスクリプトと異ならない程度を目標にしてダイアログを完成させていく。A・Bのロールを交代するため何度でも立ち位置を入れ替え、A・Bのダイアログを何度でも練習させていく。<発展>上記までで終わってしまえば、AはBよりも楽なロールということになってしまう。仕上げの段階では教師が徐々にスクリプトを隠してしまい、A・B両方がダイアログの内容と流れを思い出しながら、使われていた語彙表現をできるだけ使いながら対話をさせていく。練習が単調になってしまわないためには、段階的かつ意図的にスクリプトを隠すことを行う。学習の様子を観察しながら教師は見せる部分、隠す部分を適切に判断し調整するのがよい。最終的にはダイアログの場面を想起させる画像・写真のみをモニターに映し出し、学生にダイアログさせるというアクティビティに達することになる。(写真3参照)このあと、練習したダイアログと同じトピックで自由発話をさせてみる発展的スピーキングアクティビィにつなげていくと、一層臨場感は増す。さらに発展させられる場合には、トピックや文法の流れをそのままにして、A・Bの役割を自分自身に置き換え、ペアで自由発話にしていくこともできる。f.指導上の注意点:ダイアログの選定を間違うと、無理な暗記を強いることになりかねない。選定時には、A・Bロールの話者の発言量や難易度に着目して、無理すぎないものを選びたい。ごく簡潔なもので練習を開始すると、ダイアログが複雑になったり長くなったりしてもチャレンジできるようになっていくため、急ぎすぎず欲張りすぎず徐々に確実にハードルを上げていくことで、発話の土台を作っていくことができる。全文の一言一句を暗記しようとする学生が多い場合は、暗誦するのが目的ではなく、対話の流れや発話内容を覚えておき、それを英語にして口から出してみるという助言が必要になる場合が多い。ハーフブラインドアクティビティは、初心者に向いているとも限らない。英語レベルが上がるにつれ、ダイアログの内容を難しくしていったり、必ず使うべき語彙表現を提示したり、文法表現をコントロールしたりといったことが考えられる。練習が成果に結びつくかどうかは、どのようなダイアログを選ぶかが鍵となる。レベルが上がるにつれ、最初の段階のスクリプト参照ありでの対話練習部分の時間を短くするなど、時間配分の工夫によって、ハードルの数や高さを適切に調整することができる。3.7コミュニケーションa.目的:一方的に発話するだけでなく、相手との双方向のやり取りを成立させるための意欲を培う。それまでに学習した語彙表現や文法を活用してみようとする機会を増やし、「伝わる」「分かる」「分かり合う」というプロセスを通してコミュニケーション力をつける。b.教材例:TM(教師用資料)内コミュニケーションアクティビティ、外部教材c.学習形態:ペア、3-5人までのグループd.適用化の代表例:Reordering、Repurposing、Additione.指導例:①人物描写と状況説明写真4は、小栗が1年次クラスで実践した例である。1年生の基礎的なアクティビティの例としては、テキスト内ではイラストを用いて、現在進行時制を使って人物描写をしていくといったアクティビティをペアで行うものがある。(WorldLinkIntro,p.45)こうしたアクティビティは、単調になりがちなので、少し発展させQandAの形式に発展させ外国語としての英語力定着に向けた教材の適用化とインストラクショナルデザイン―17―写真31年生「ハーフブラインド」アクティビティ例

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