中部大学教育研究19
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出してしまい、ペアで文中に当てはめていく穴埋め・変形ワークを用意した。このユニットの文法ターゲットは動詞時制(現在・現在進行・現在完了使い分け)で、カードには動詞の原形が書かれている。ペアはこれを文中に当てはめて行きながら、分脈に応じて時制も適切な形にして行くことになる。最後には、ペアのうち一人だけが音声を確認することができる時間を設け、リスニングを通して修正を行えるようにすることもある。ペアの両方が音声を確認するようにすれば、耳のみを頼ることになるが、片方ずつが聞くようにすることで、もう片方は文をよく読み確認するという協力的な分担をすることにもなる。②「ListentoRead」(耳で読む)空欄補充をしようとする際に文字よりも音声情報に集中でき、いつのまにか全体の英文を読みとろうとするように意図して形成したオリジナルアクティビティである。英語嫌いな学生の中には英語文字を見るだけで拒否感が増す学生も少なくない。語彙数が多く、語彙の難易度も少し学生のレベルよりも高めだといった場合には、文字情報の多さに圧倒されてしまわないように、ペアでの「耳からリーディング」というリスニングアクティビティに転じることがある。ペアでのリスニングアクティビティにする場合には、前半後半の2部構成とし、ペアそれぞれが前半、または後半を担当し、途中で担当を交代するという場合もある。未知語が登場する場面では、未知語に意識が向いてしまわないよう、内容上重要な、あるいは基本語彙が使われている部分を穴埋めにしてしまい、辞書を調べなくても穴埋めできるようなアクティビティに敢えてすることがある。初回では「分かりやすいところへ意識を向ける」試みをし、時間数や回数を限定して辞書を引く機会を与えて、辞書を引くことができるようにしたりもする。そうすることにより「いつ辞書を引くか」「何を考えてから辞書を引くか」というタイミングを体験させることができる。リスニングをして読むことで、音声と文字情報が補完し合うようなアクティビティを構成することができる。発展的なアクティビティとしては、空欄補充が終わってからリーディングの内容に沿ったサマリー文を、音声だけを聞いて完成させたり、書かれた質問文に音声だけを聞いて書いて答えさせたりといった発展的アクティビティも用意することができる。③「ParagraphShuffle」(パラグラフシャッフル)段落の展開が明確で、ライティングの指標にもなるようなリーディング素材の場合は、テキストをコピーし、段落をバラバラにしてしまい、段落の並べ替えをペアでさせる「パラグラフシャッフル」にしたり、ある程度の文単位で切り刻んでしまってカードを新たに作り、文の並べ替えと段落構成をペアでさせたりすることがある。これは最も難易度が高いが、分かりやすいリーディング素材を使えば、初心者レベルにも実践することができる。少し難易度をあげたい場合には、一文抜いてしまった文を、段落の内容に合わせて当てはめるアクティビティを増やすこともできる。段落のどこに一文を補うかを考えさせることは、段落展開の学習になり、ライティングの素地を形成することにも繋がる。f.指導上の注意点:学生のその時のレベルにとってやや難読なものは足場かけをし、容易なものはハードルをあげる必要がある。辞書を引かせたい場合でも、未知語を逐一辞書で引いていれば、辞書を引いている時間の方が長くなり、本文を読む時間が減ってしまうことにもなりかねない。クラス全体に共通する未知語は、アクティビティ開始前のウォームアップで語彙をピックアップして意味や発音を確認しておくなどボトムアップの学習を進行させることもできる。しかしながら、いつでもボトムアップであれば良いのではなく、素材によってはまず内容に意識を向けたいもの、語彙表現に注意したいもの、話の順序に着目したいもの等、素材を最大限に活かしながら、「いつの間にか読んでいた」ことに繋がるアクティビティを用意することで、「読むのは苦手だ」と思っている学生の抵抗感を減らせるようにしたい。辞書を引かせるタイミングも、教師がコントロールするのがよく、闇雲に辞書を引くのではなく「見外国語としての英語力定着に向けた教材の適用化とインストラクショナルデザイン―15―写真22年次リーディング「パラグラフシャッフル」例

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