中部大学教育研究19
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類義語との相違にも注目をし、その際に辞書を活用させている。辞書は必ず対面授業に持参すること、教師が敢えて使用禁止とする場合以外、学習中にいつでも使用して良いこととしている。語彙ニュアンスを理解しようとしたり、日本語との相違に関心を高めようとしたりする際に、語源的な説明を加える場合もあるが、語彙を知ることが言語学習のゴールであると誤認識してしまわないように、常に使える言葉を増やすと言う視点から、語彙指導をあらゆる場面に統合している。文法ルールと同じく、ここでも「いつの間にか語彙が増えていた」ことを目指しており、「語彙を知っている」ではなく、「使える語彙を増やす」ことを最終目標としている。Additionの例としては、SuperTeacherCom(https://www.superteacher.com)のWordSearchPuzzleGeneratorを、語彙認知の復習に役立てたりしている。これは認知させたい語彙を入力するとWordSearchアクティビティを作成してくれるオンラインツールで、リーディングなどのアクティビティを通して学習した語彙を想起させるために活用している。教材例1にあるようにWordSearchには通常語彙リストがあり、パズルの中からターゲットとする語彙を早く探し認知するという方法で用いる。しかし著者の授業では、前の授業の内容を想起することを目的としているため、語彙リストの提示はしていない。その代わり、音声がある場合は、最終段階に音声を流すことでリスニングを統合したり、動画アクティビティの場合には音声なしで動画のみを見せることで、前の授業の学習場面を思い出させたりすることに活用している。f.指導上の注意点:語彙学習は、一様に品詞や日本語訳を確認したりすることに留まらない。コンテキストに応じた語彙の使われ方に着目し、語彙の習得のしかたを授業では実践させる。語彙を増やすとはいえ「英語は苦手」だと思ってきた学生の場合、語彙習得はハードルが低いものではない。特に、書字(正しいスペリングでつづる)、読字(正しい語彙認知をする)のいずれか、または両方に困難さを抱えた学生がいることもあり、教師が「怠けている」「覚えが悪い」「努力が足りない」と決めつけてしまっては危険な場合もある。どのような教え方が適切で、どのような目標までは達成させる必要なのかを、教師は選択し続けなくてはならない。そこで、何もかも必ず覚えるというプレッシャーを与えるより、受容語彙を増やすことを最優先課題とし、スペリングを覚えることを含め、使えるようになることは次の段階とするなど段階的な学習を試みている。また、個人アクティビティでの負担が予測され、ペアで協力し合ったほうが学習濃度を上げることができると期待できる場合には、小テストのようなアクティビティもテストではなくペアでの学習に切り替えて行うことがある。語彙学習につまづき英語嫌いになってしまう例は少なくない。誤った学習を防ぐためにも、著者のクラスでは単語調べを含む予習はさせないことが通常である。むしろその時間を使って充分に復習をさせることで、身についていることといないことを明らかにしたり、さらに定着させるための課題を用意している。3.4リーディングa.目的:文字情報を読むということに対する抵抗感を軽減し、読んでみようとする意欲を培う。読んだ内容に関心を持つ、読んだ情報を使って次のアクティビティを行う、語彙や文法の使われ方に気づく力を養う。b.教材例:テキストリーディングセクションc.学習形態:ペアまたは3-4人のグループd.適用化の代表例:リーディングをリスニングに、リーディングを文法に、リーディングを語彙学習にというようにRepurposingが発生することが多い。e.指導例:①「Vocabulary&GrammarinContext」(語彙・文法選択)コンテキストに応じた語彙・文法選択アクティビティリーディング本文から、そのユニット内で学習ターゲットとしたい文法ルールを応用させるため、語彙を抜き取り、語彙リストや語彙カードを作成しオリジナルアクティビティを構成した。WorldEnglish1Unit4(p.50-51)のリーディングでは、写真1にあるように基本的な動詞を抜き中部大学教育研究No.19(2019)―14―写真1Readingアクティビティ(WorldEnglish1Unit4)

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