中部大学教育研究19
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をテキストのまま使用したのは2件であった。著者の取り組みは、前述のTomlinson(2010)によるリストにある8種類の教材適用化と類似している。図4にある「オンライン化」は、導入しているWeb教材作成・LMSプラットフォーム「Glexa」に課題を置くことを示している。この例は1テキストの中の1Unitの実践例であるが、こうした適用化がテキスト全般を通して行われている。3教材適用化されたアクティビティ実践例学習状況に応じて、テキスト内のアクティビティの順序を入れ替えることは授業計画時に生じる場合もあれば、その日のクラスメンバーの状態によって実践時に発生することもある。いずれにしても順序を入れ替えることにより、より効果的に習得させることを目的として行われる。「除外」は、単に「つまらないからやめる」というような理由で行うものではない。他のアクティビティに統合してしまうことでそのアクティビティ自体を行う必要はなくなったり、そのアクティビティを実践するに足る習熟度がまだ満たなかったりという理由から、そのアクティビティを行う時間を省き、他のアクティビティの時間に充てるという適用例である。では、その他の教材適用化によりアクティビティはどのようなものになっているのか、スキル別に分類しながら実践例を次にあげてみる。3.1発音a.目的:英語の音構成に慣れ、母語にない音の発音に慣れていくことで、英語で発話する自信に結びつく土台を形成する。それとともに、英語を聴く力を向上させる。b.教材例:語彙・文法・対話・リーディングなど、例文があるアクティビティ全てc.学習形態:全体またはペアd.適用化の代表例:Repurposing(学習目的の変更)、addition(追加)など。発音を学習ターゲットとしたアクティビティ以外では、Repurposingが生じることが多い。初めて指導を開始する学期においては、発音に焦点を当てた教材を追加することにより、英語の音構成の仕組みを理解しやすくしたり、練習に慣れやすくしたりすることが多い。(addition参照教材例:FocusonPronunciation,Pearson/WellSaid,Cengage)e.指導例:ターゲット語彙を発音したり、リーディング素材を音読することにとどまらず、文法例文、文法練習課題、対話のモデル音声等は時間が許す限り学生に発音させ、発音の矯正を必要に応じて行う。語彙単位での発音はもとより、プロソディ(韻律)に着目して例文を発音し指導する機会を増やすことにより、まず英語の音声の特徴に慣れられるようにし、長期的にリスニング力の向上をめざす。f.指導上の注意点:全体での指導時には「声を出しておけばいい」「発音をしているふりをする」というように漫然とした音出しになってしまうことがある。英語の音に慣れる必要性を認識できていけるようにしたいところではあるが、理論を述べても効果が上がることは期待できない。適切な助言と矯正を教師ができることが重要で、発音・プロソディの練習とリスニングのような音声面でのアクティビティをうまく組み合わせていくことで、練習の効果を学生自身が認識できていくようにアクティビティを構成することが必要である。パッセージ(複数の文)音読を発音練習の重要な機会であるが、発音や文、単位のプロソディを指導する時には、それにのみ焦点を当てることが望ましい。音読時に効率的に発音も語彙も文法も、済ませてしまおうと教師は考えがちだが、そうしてしまうと学生は何を身につけるためのアクティビティをしているのかが分からなくなってしまう。発音は習得に時間を要するため1つのタスクに専念させ集中的にトレーニングを行いたい。一般的な授業での発音矯正は、英語母語話者のような発音をすることが目標ではなく、あくまでも聞き手が理解できる発話に到達すれば良いと考えられる。英語母語話者のような音声の真似をしているだけで、本当は聞き手に伝わらないような発音でしか話せていないことを放置すべきではない。しかし、過度な矯正指導は、場合によってはやる気をなくさせることにも繋がり得ることにも留意したい。3.2文法a.目的:文法ルールに関する知識を蓄えることに留まらず、文法を使う力を育成する。b.教材例:テキスト内文法アクティビティ、追加文法例教材c.学習形態:ペアd.適用化の代表例:ターゲットとなる文法の習熟度に合わせ、練習例文数を増やす必要がありadditionが生じることが多い。すでに習熟度が高いターゲットの場合は、説明をomissionあるいはreorderingすることもある。しかし、その場合は他のアクティビティで補えることを条件とすることが多い。また、学習の達成に向けてadditionは多数発生するが、それは文法のターゲットを増やすことではな中部大学教育研究No.19(2019)―12―

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