中部大学教育研究19
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1はじめに語学授業には、教材が選ばれる。それがコースブック(総合教材)であろうと、教師による教材コレクションであろうと、プロジェクト課題のテーマであろうと、英語授業には何らかの教材が用意される。活気のある授業について考える時、山岸(2010)は、「授業は教師が一方的に話をし、指示するだけでは成立しない。」と述べている。では、活気あふれた学習空間が生まれ、学習者が意欲的に授業に取り組み、英語力を定着させるためには、教師はどのように授業づくりに取り組めばよいのだろうか。英語力のうちreceptiveな力(受容・理解する力)はもちろんのこと、productiveな力(産出・発信する力)を身につけることが求められている。しかしながら大学においての一般的な英語授業のクラスサイズは40人以上など、productiveな力を存分につけるに適した人数ではないことが多い。また英語力に応じた適切なクラス分けも困難な場合が多い。そのような状況で、どこから何を目標にproductiveな力を形成できるのかは、英語教師を常に悩ませている課題である。限られた時間とはいえ、授業で対面する90分が、何かを揺さぶる機会とするためには、教師は何をすれば良いのだろうか。本稿では、教材選定とその適用、さらにはproductiveな力をの形成を目指したアクティビティ実践に注目する。2教材選定と教材適用2.1教材選定カリキュラムのゴール、各学期、各学年の目標そして費用等を考慮に入れて教材は選定される。どのように優れた教材であっても、どの状況のいずれの学生にも完璧にフィットするような教材は存在し難く、教師ができるのは最大限有効活用し得る教材を選定することであろう。学習する学生の特性、英語レベル、英語学習経験や背景によって、学習者集団には一種のシナジーが生まれるが、そのシナジーも全クラスが一定なわけではない。一学年を取り出しても、毎週の授業の積み重ねによりシナジーは変化していくし、学年が異なれば一層シナジーは異なって当然である。新しい年度の準備段階であれば学習者集団がどのようであるかをあらかじめ予測しておくことも不可能なため、教師はある程度集団の個性を推定し、英語レベルも推定して教材を選ぶことになる。その場合最も重要なのは、教材の柔軟性であろう。教材が柔軟であるとは、いかようにも補正をかけたりすることができることである。著者が携わってきたロボット理工(ER)学科の場合は、1年―9―外国語としての英語力定着に向けた教材の適用化とインストラクショナルデザイン小栗成子*1・デイビッド・P・アレン*2要旨英語でのコミュニケーション能力を、果たして週一回の授業で培うことは可能なのだろうか。本稿は著者が本学に2014年度に開設されたロボット理工学科の1-2年生英語必須科目において取り組んできたアクティブラーニング型授業の実践をもとに、本学英語授業でのアクティビティの進め方の例を報告するものである。著者はこれまで英語学習への恐怖感や不安感を軽減しつつ、英語基礎力を定着させるための授業実践をしてきている。単に表面的に活発で賑やかであることを目指すのでなく、学生一人ひとりの内面に学ぼうとする意欲が活性化することや、それが持続的な知的好奇心へ繋がるような授業デザインを探究してきた。カリキュラム目標の達成を目指す際、授業をどのようなアクティビティで構成し、どのように指導することができるのか、またその際どのような教材適用化の方法が有効なのかについて、アクティビティの具体例と共に提案する。キーワード英語教育、英語力定着、教材活用、教師の役割*1人間力創成総合教育センター語学教育プログラム教授*2人間力創成総合教育センター語学教育プログラム講師

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