中部大学教育研究18
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析し、累積効果の評価を研究論文として『中部大学教育研究』(No.17,pp.19-33,2017年)で学内外に発表した。①Webを利用した「学生による授業評価」「教員による授業自己評価」これまでの経緯により、「学生による授業評価」は授業改善を主たる目的として実施しているが、学期半ばでの評価は“授業”の本当の評価を表したものではないとの意見を受けて、授業が完結した学期末にWebを利用して行っている。また、受講中の学生にも開講時期の中でも改善を求める声に対応できるように、後述する「授業改善アンケート」の実施を続けている。実施科目は、原則として学部授業のすべてを対象とし、授業の形態にかかわらず複数教員で担当する授業科目についても実施している。受講生にとっては、一人の教員で担当しても複数の教員で担当しても“授業”に変わりはないことから、授業評価の結果は“教員”に帰するものではなく、“授業”そのものに帰するものと考え、担当するすべての教員にはその授業に対しての責任の所在を明らかにするものである。設問は、授業形態にかかわらず同じ選択形式の設問を8問(他に学生自身の状況を問う設問を2問)、加えて自由記述欄を設けている。Webを利用したことで受講生は回答期間中であれば“いつでも”、“どこからでも”回答できるようになったが、マークシートのように授業時間内に強制的に回収しないため、Web導入時から危惧されていたように回答率は減少した。反面、Web利用が影響しているかどうかは定かではないが、自由記述の回答数が紙ベースで行っていた旧方式の10倍以上(参考:2017年度春学期2,980件、秋学期は1,750件)に増加している。自由記述の内容も従来は授業への批判的要因をもつ意見が多くを占めたが、Webを利用してからは教員への感謝の言葉や授業改善への提言など前向きな意見が多くみられるようになった。また、教員が担当したすべての授業(複数担当による授業を含む)を振り返って回答する「教員による授業自己評価」では、学生と教員の意識の差について“見える化”を図った。教員はこれらの回答結果を総合的に分析して、自由記述のまとめを含む教員からのコメントを学内に公開した。教員からのコメントを公開することは、回答者へのフィードバックを目的としているが、授業評価が学生と教員とのコミュニケーションの機会となることをねらっている。Webを利用した利点として、回答期間終了の“2日後”に教員は回答結果を閲覧して学生へのコメントを入力でき、教員からのコメントと結果の学生への公開は回答期間終了から約1か月に短縮することができた。このほかにも受講生の振り返りを促す仕組みとして、集計結果の表示画面に受講生自身の回答を一緒に表示するようにしたこともWebを利用した利点である。②「授業改善アンケート」「Cumoc(キューモ)」システムの提供「授業改善アンケート」システムは授業評価を学期末に行うことにより、当該受講者に対する授業内での授業改善の機会が減少したことを補うシステムとして提供された。このシステムは、教員にその利用を義務付けるものではなく、受講生と教員とのコミュニケーションツールの一つとして提供されたが、その後の回答方法の多様化への改修(携帯電話対応、スマートフォン対応)がクリッカー「Cumoc(キューモ):ChubuUniversityMobileClicker」への発展という同システムにとっての転機をもたらした。クリッカーは、授業を双方向対話型にするために受講者からアンケートや回答をリアル―76―

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