中部大学教育研究18
72/122

にネットを使った情報検索(や論文検索)や、レポート(や論文)の執筆」ができ、「授業の宿題や課題ができる」ことにも価値を見出している。また、この2点は学科専用の「学習の場」があることと並んで、利用者がもっとも高く評価している項目であることにも注目したい。次に、学習者が高く評価している項目は、MMRの学習環境である。彼らは「MMRの存在は自分にとって重要だ」と考えている。特に、過去の卒業論文が閲覧できること、自主学習としてビデオ教材や多読教材などを大いに利用できること、必要があればグループワークができることが、満足度が高い要因のようである。また、学習をサポートする「学生アシスタントの仕事ぶり」や「先輩に留学や学生生活について気軽に相談できる」など、協働学習がしやすい人的環境を高く評価している。さらに、同じ学習仲間がMMRに集まり、お互いに「頑張っているのをみると、良い刺激になる」としている。このことから、MMRは利用者のモチベーションを上げる学習環境づくりに寄与していると言えそうである。一方で、改善が必要であることが示唆されたものは、コンピュータの老朽化とインターネットの遅さであった。機器の更新後6年が過ぎ、MMRの設備の老朽化が深刻になりつつあることは否めない。また、学習環境としては高く評価しているものの、「自分の実力や興味に合った英語教材(例.本やDVD)がある」かどうかについては、やや不満があるようである。今後は、レベルの異なる自主教材などの導入と充実、オンライン教材の紹介などにも力を入れていく必要がありそうである。また、「語学の授業(例.スピーキング練習)もできることが良い」と「毎日のように利用している」の2項目に対する評価が相対的に低いものとなった背景には、スピーキング練習とコンピュータを利用した語学教育が直接結びつかない、という要因があるのかもしれない。コンピュータ利用と学生同士の顔を突き合わせての言語活動を、さらに有機的に結び付けて授業を行うような工夫が求められているのかもしれない。MMRの1日の平均利用者数は、英語英米文化学科の総人数277人に対し、延べ約160人であり、約6割の学生が毎日利用していることになる。このことから、MMRがいかに英語英米文化学科の学生にとって必要とされているかがわかる。もちろん、毎日利用する「ヘビーユーザー」が6割もいると判断するのか、6割しかいないと考えるかは議論の余地があるが、著者らは前者だと考えている。ただし、「毎日のようにMMRを使用していない」学生が、MMRになんらかの不満や不具合を感じていることは間違いないだろう。コンピュータやシステムの老朽化に加えて、静粛が保たれない時間帯があることが要因となっていると考えている。前述のように、教室を前後に分けて使用することがあるが、仕切りがカーテン1枚のため、授業の声が聞こえてしまうので、完全な静粛が求められる自習室としては望ましい環境ではない。また、午前中の利用者が少ないことも問題視している。このように、改善すべき点がまだまだ残っているのは間違いない。6おわりに本調査はマルチメディア教室(MMR)に関しての簡易的な満足度調査であったが、著者らが予測していたことと、おおよそ同じような結果を得た。基本的にMMRに関する満足度が非常に高いことに加え、MMRは単にコンピュータ利用の英語学習や課題実施のための施設ではなく、英語英米文化学科の学生にとって、中心的な日常的学習の場であり、学習の動機付けの場であり、コミュニティー形成の場であることが確認できた。一方で、施設の老朽化に対する不満の改善は急務であることも判明した。当面は、教員と学生双方の利用方法の改善と工夫で対応する必要があるだろう。しかしながら、長期的には、現代的なアクティブラーニング実践のメディア教室として、また利用者の研究や自主学習の場として、単なるコンピュータの更新ではなく、新しいコンセプトを取り入れた改良・改築が必要となってくることは間違いない。将来的には、この教室内では、授業中やオリエンテーション以外は、英語のみを言語コミュニケーションのメディアとする“EnglishLearningPlaza”のような構想も視野に入れる必要があるのかもしれない。注1)http://www.raosoft.com/samplesize.html(2018年7月26日アクセス)2)[Skewness/Standarderrorofskewness≧1.00]の場合を非正規分布と見なした。―62―中部大学教育研究No.18(2018)

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る