中部大学教育研究18
70/122

帯が非常に多い。教室の前には、教員・アシスタント用のコンピュータ2台とコンソールが設置されている。ここに学生アシスタントが常駐し、多読用教材の管理などを行なっている。1日に延べ160人前後が、この教室を毎日利用しており、常に活気に溢れている施設である。(MMRの様子は図1を参照)図1MMRでの卒論発表会の様子MMRの機能は複合的である。講義室、演習室、自習室、課題プロジェクト(MReader、WordEngine、留学準備・帰国後プロジェクト、卒論研究)のための実習室、語学系研究実験室、英語学習相談室、学生交流室として機能しており、英語英米文化学科の教育・学習の中心的な存在となっている。1年生から4年生までの学生が、複数の授業をここで受講し、自主学習用に開放された時間帯には、課題などをここで行う。教員の指導のもと、選抜された学生アシスタントは、後輩学生への学習アドバイス、長期海外研修などに関わる留学相談、多読教材の貸出業務、教室管理などを行っている。このようにMMRには、気軽に、後輩学生が先輩学生に授業や留学の相談をし、英語学習のアドバイスが受けられる環境がある。英語英米文化学科の学生は、1年生から4年生まで広く交流しており、「学年に関係なく仲が良い」と言われるのは、学生が上級生、下級生を問わず助けあいながら学ぶ環境を、このMMRが提供しているからであろう。本学科の学生は、授業の合間の時間帯の多くをここで課題などに取り組んで過ごしている。このように、MMRは英語英米文化学科の学生にとって、学部学生としての「アイデンティティー形成の場」ともなっている。もちろん問題がないわけではない。MMRでは学生同士が会話することを禁止していない。声を出してはいけないような語学学習の場は本末転倒だと考えるからである。反面、その声が他の学習者の妨げになることもある。また、機器が古いため、ソフトが立ちあがるのに時間がかかり過ぎるという問題も起きている。最近は自分のラップトップコンピュータを持ち込むような不思議な光景が見られることがある。このような問題点の洗い出しと改善点を探るべく、簡単なアンケート調査を実地した。以下がその概要と報告である。3調査概要本調査には、18項目から成るオンライン質問紙を使用した。質問項目の構成は、調査協力への同意を確認する問いが1問、氏名と学籍番号の記述(それぞれ1問)、MMRに関する満足度を問う質問・記述が15問(質問・記述の一覧は資料を参照のこと)である。回答者は、MMRに対する満足度を問う質問・記述に対して、その内容が自身の実感と合致する程度を6件法で評価した。たとえば「MMRで仲間が頑張っているのをみると、良い刺激になる(Q4)」という記述に対して、「1:まったくそう思わない」から「6:とてもそう思う」までの範囲で回答を選択した。満足度を問う質問・記述の15問は、本報告書の著者3名が合議し、作成した。質問項目作成の際は、学生からの意見、教員自身の実感、他の教員から伝え聞くMMRに関する意見などを参考とした。上記の合議の後、英語英米文化学科に所属する他の教員からのコメントを取り入れ、記述の一部を変更した後、最終的な調査材料とした。英語英米文化学科の在籍学生数は、2018年7月10日時点で277名であった。この内、休学中の学生と登校が特に少ない学生を除いた250名を母集団とし、推定値のMarginoferror=5%、Confidencelevel=95%となる152名を理想的なサンプルサイズとした1)。学科の連絡網を使用し、可能な限り多くの学生に調査への参加を呼びかけ、2018年7月18日から7月24日の間で調査を実施した。結果として、回答拒否1件を除く147名の英語英米文化学科所属の学生から有効回答を得た。理想的なサンプルサイズ(N=152)マイナス5名のデータから算出された統計量を用いた推定・分析には一定の代表性があると考え、147名を最終的なサンプルサイズとし、データ分析を実施した。MMRの学生満足度と改善点を可視化するため、15の質問項目の全てについて記述統計を算出した(表1を参照)。正規分布が期待できない項目が多数あったため、中央値を使用して記述統計の意味を解釈した2)。平均値の95%信頼区間(95%CI)についてもブートストラップ法(Percentile法、B=20,000)を用いて算出した。これらの値も、参照値として表1に記載する。―60―中部大学教育研究No.18(2018)

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る