中部大学教育研究18
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1はじめに中部大学は工業大学から発展したという経緯からか、機器を利用した語学教育には力を入れており、1990年代ころまではLL機器やコンピュータを利用した語学教育では日本の先駆的立場にいた。当時は本学に「語学ラボラトリー学会(LLA)」(現在の「外国語教育メディア学会(LET)」)の本部があり、アメリカのInternationalAssociationforLanguageLearningTechnology(IALLT)学会と共同で、テクノロジーと語学教育に関する世界大会(FLEATⅡ)を本学で開催した歴史もある。その後、1998年には人文学部の設置と同時に英語英米文化学科が置かれ、数年後には「語学ラボラトリー学会(LLA)」の創立メンバーの1人であり、東京大学の入試にリスニングを導入したことで著名な鈴木博氏(東京大学名誉教授・英語英米文化学科2代目主任)が中心となり、現在のマルチメディア教室(以下MMR)を開設した。MMRはLLシステムとコンピュータとを組み合わせたCALL(ComputerAssistedLanguageLearning)施設である。これまで2回の機器更新を重ね、現在はクライアントとしてマッキントッシュ・コンピュータを46台(学生用44台と教員・アシスタント用2台)、サーバーを2台設置し、日々運営している。本報告の目的は、学科設立20周年を迎えた節目の年に、英語英米文化学科の心臓部ともいえるMMRに対する学生の満足度を調査することである。この調査結果をもとにMMRの改善点を調査し、学生にとって、さらに利用しやすい施設に今後発展させていきたい。2マルチメディア教室(MMR)の概要調査報告に入る前に、まずMMRの概要と機能を概観しておきたい。前述のようにMMRには学生用コンピュータが44台と教員・アシスタント用コンピュータが2台ある。学生用コンピュータは基本的に語学学習専用であり、語彙増強ソフトや多読教材に取り組んだり、インターネット上の英語学習サイトで学習ができるようになっている。全ての教員と学生は与えられたアカウントで利用し、MMR内のどのコンピュータからでも、自分のファイルにアクセスし、管理することができる。教室は前半分(24名)と後半分(20名)にカーテンで仕切ることができ、教室の前半分で授業をしながら、後半分を自習や研究用に開放することも可能である。教室全体で授業を行うこともあるが、利用者が多いため、実際は、この形態で利用している時間―59―英語英米文化学科における「マルチメディア教室」満足度調査-学生の視点から-柳朋宏*1・三上仁志*2・塩澤正*3要旨英語英米文化学科創設20周年という節目を迎えるにあたり、長年、教員と学生に活用されているマルチメディア教室(MMR)に対する学生の満足度調査を実施した。本稿は、その調査結果を報告するものである。MMRは英語英米文化学科の心臓部ともいえる複合的機能施設であり、日常的に、多くの学生が授業や自習のために利用している。今回の調査は、MMRの問題点をみつけだし、改善点を探ることを目的としたものである。学生はMMRで、コンピュータを用いた情報検索ができること、課題や論文執筆などの作業ができることにかなり満足している。また、学生アシスタントに授業や留学の相談ができたり、自習学習やグループワークができたりする点に満足している。一方、機器の老朽化のため、ネットに繋がりにくいことやソフトの立ち上げに時間がかかる点に不満を感じている。こうした調査結果は、今後、MMRを学生にとって今以上に利用しやすい施設へと発展させるための基礎資料としたい。キーワードマルチメディア教室(MMR)、満足度調査、複合的機能施設、設備老朽化の問題*1人文学部英語英米文化学科教授*2人文学部英語英米文化学科講師

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