中部大学教育研究18
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すます【交流の場としての子育てセミナーの意義】と【学習の場としての子育てセミナーの意義】を実感するというサイクルを成していた。その結果、【母子の関係性への気づき】つまり、母子の愛着行動から「子と親」の関係性が構築されていることを実感していた。6考察我々は、本研究に先行し、母性看護学臨地実習における学生の学びについて、学生が記載した「母性看護学臨地実習を通して学んだ母性看護の役割」の内容をTextMiningStudioforWindowsVer.5を用いて分析・検討した4)。その結果、学生は臨地実習において、退院後まで予測するアセスメント力と指導力の必要性や継続ケアの必要性について学ぶことができていた。しかし、継続支援に関する具体的な内容は乏しく、退院後の母児の様子や生活のイメージが困難な様子であった。少子高齢社会であり、核家族が多数を占める日本の社会状況を反映し、日常生活の中で母児と身近に接した経験が全くない・ほとんどないという学生が大多数である状況を考えると、退院後の母児の状況をイメージすることが困難なことは当然である。しかし、セミナーに参加した学生は、短時間ではあるが児の世話をした経験や母親からの「学生さん達が赤ちゃんを見ていてくれるから安心してトイレに行ける」、「久しぶりにお出かけできて気分転換になった」などの肯定的な感想を得て、退院後の母児の生活状況や育児の大変さを実感することができていた。また、臨地実習時とセミナー時の母児を比較し、母児双方の成長や変化を実感したり、母親の気分転換や情報共有・交換の場の必要性に気づき、退院後の継続支援の必要性を実感したりしていた。さらに、セミナー時の母児のやりとりから、臨地実習で見聞したよりも更に幅広い視野で、母親から子へ子から母親へと同時的に作用する母児相互作用について捉えることができていた。学生がセミナー運営に参加することは、退院後の母児の生活と母児双方の成長を実感する一助となり、臨地実習時とは異なった視点から継続的な育児支援の必要性について理解することができたと考える。また、地域で暮らす母児と場を共有し、母児の成長を促進する支援を行うことで学生も成長するという機会が得られたと考える。しかし、セミナーに参加したことによる学生自身の成長について、自らがそれを認識しているような発言は少なかった。今後は、母児のみでなく、学生自身も自己の成長を実感することができるよう、共育共学をより意識した企画・運営方法を考えることが課題である。今後も本活動を継続し、地域の母児と学生が共に成長し、学ぶ機会を設けたい。7結論1)学生は、母性看護学臨地実習時とセミナー時の母児の様子を比較することで、母児双方の成長と母児関係が構築されていることを実感していた。2)学生は、母性看護学臨地実習とは異なった視点から継続的な子育て支援の必要性について理解し、実感していた。3)大学で開催する子育てセミナースタッフとしての経験は、学生自身の成長を促す機会となった。謝辞本研究にご協力いただいた学生の皆様に感謝致します。臨床や地域の母子保健活動におけるますますのご活躍を願っております。※本研究は平成28年度文部科学省「地(知)の拠点整備事業(COC)」地域志向教育研究活動の助成を受け実施した。引用文献1)「健やか親子21」の最終評価等に関する検討会(2014).「健やか親子21(第2次)」について検討会報告書.http://sukoyaka21.jp/pdf/dai1_dai2-1.pdf.2)山浦晴男(2012).質的統合法入門考え方と手順.p.15.東京:医学書院.3)山浦晴男(2012).質的統合法入門考え方と手順.pp.23-77.東京:医学書院.4)岡倉実咲,横手直美,山下恵,橋本妙子(2017).受け持ち対象者の分娩様式が母性看護学臨地実習における学生の学びに及ぼす影響-テキストマイニングを用いて-.中部大学教育研究,17,pp.59-65.―56―中部大学教育研究No.18(2018)

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