中部大学教育研究18
60/122

1はじめに我が国の母児を取り巻く核家族化、晩婚・晩産化等の環境変化1)により、母親は育児不安やストレスを抱きやすく、産後うつや乳幼児虐待に発展するケースもある。本学の保健看護学科母性看護学臨地実習中の学生は、これらの社会背景を踏まえ、分娩後入院中の母児との関わりの中で退院後の生活を視野に入れた産褥期および新生児期のケアを中心に学習している。しかし、社会資源の活用を含めた退院後の支援やライフサイクル等についての思考を深めることが困難な様子が見受けられた。その理由の一つとして、地域における母児の生活を実感する機会が少ないことがあげられると推察した。そこで、地域子育て支援の一端として、本学で2013年度から毎年開催している子育てセミナー(以下;セミナー)の運営に学生が参加し、生後2~8か月頃までの児の発育発達の過程と母親の子育ての悩み等の実例に触れ、母児と共に学ぶことで学生の成長が促されるのではないかと考えた。本研究の目的は、大学で開催する地域子育て支援「子育てセミナー」の運営に学生が参加することによる教育効果について検討することである。2母性看護学臨地実習の概要母性看護学臨地実習(以下;臨地実習)の目的は、女性の健康の維持・増進と健康回復における看護の役割をとらえ、各ライフサイクルにある女性、特に妊娠・分娩・産褥期の女性と胎児期を含む新生児の健康を目指した看護が実践できる基本的な知識・技術・態度を習得することである。実習期間は2週間であり、病棟実習を中心に外来実習も行う。病棟実習では、分娩後の母親とその新生児を受け持ち、看護過程を展開する。また、機会があれば積極的に分娩見学及び分娩期のケアを実施する。外来実習では、主に妊婦を中心とした診察の見学・介助及び妊婦健診を実施している。学生は2年次秋学期と3年次春学期に母性看護学Ⅰ・Ⅱで学んだ知識と3年次秋学期以降に始まる2週間の臨地実習の経験とを統合し、母性看護の役割についての学びを深めている。3子育てセミナーの概要ベビービクスと子育てミニレッスンを組み合わせた体験型子育てセミナーを、春日井市近隣に在住する2~8ヵ月頃の児とその母親を対象として、平日の午前―53―大学で開催する子育てセミナースタッフとしての経験が看護学生に及ぼす教育効果山下恵*1・岡倉実咲*2・橋本妙子*3・横手直美*4要旨保健看護学科母性看護学領域では、地域子育て支援の一端として、児とその母親を対象とした4回シリーズの子育てセミナー(以下;セミナー)を開催している。本セミナー運営に学生が携わることにより学生の更なる成長が期待できると考え、その教育効果について検討した。対象はセミナー運営に参加した保健看護学科4年次の女子学生11名である。セミナー終了後に、学生の学びと気づきについてグループインタビュー(各3~4名)を行い、質的統合法(KJ法)を用いて分析した。結果、学生は臨地実習時とセミナー時の母児の様子を比較することで母児双方の成長と母子関係が構築されていることを実感していた。また、母親の気分転換や情報共有・交換の場の必要性に気づき、退院後の継続支援の必要性を実感していた。看護学生は、臨地実習時とは異なった視点から継続的な育児支援の必要性について理解することができた。また、セミナースタッフとしての経験は学生自身の成長を促す機会となった。キーワード看護学生、共育共学、子育て支援、セミナー運営、質的統合法(KJ法)*1生命健康科学部保健看護学科講師*2看護実習センター助手*3看護実習センター助教*4生命健康科学部保健看護学科准教授

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る