中部大学教育研究18
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たがって、「2年生授業でのアクティビティ」を選ぶ学生がいて当然である。これは授業で英語母語話者教師から英語で説明や指示を聞くことがリスニングに影響を与えたと言うのと、日本語母語話者教師が数多く行うリスニングアクティビティが影響を与えたと言うことの両方を含んでいる。2年次のトレーニングは全て自主学習である。2年目にもATRCALLBRIXでのトレーニングを選択している学生が37%いることから、トレーニングの継続を彼ら自身が重視していることが把握できる。6英語音声に対する抵抗感の軽減と今後の課題本カリキュラムでは、英語全般に対して積極的ではない学生たちが多い学科で、英語のどの部分からどのように着手することが英語学習の抵抗感を減らすのかを検討し、音声を聞く、音声を自分の口からも発する取り組みを試みている。それは「英語を話せるようになりたい」と言う学生が少なくないこと、英語の音声を嫌いになる程には聞いて来ていないこと、英語の音声が関わる学習にこそ教師の適切な指導が必要であることを考慮した上でのことである。1年次の始めは、「英語を聞こえるようになりたい」と思いながらも「うまく聞こえない」壁に直面するが、その壁を乗り越える方法を一緒に考え、学生それぞれが抱えている難点を克服できる方法を生み出し指導することが教師の役割ではないだろうか。リスニングできるようになるためには、ただ聞かせているだけでもうまくいかない。繰り返し聞くだけでもうまく行くわけではない。発話への抵抗感も、ただ発音を繰り返して入ればなくなって行くわけではない。単に自主課題として課し、期末評価に含めると伝えるだけでは、英語でコミュニケーションできる力に自動的に結びついてくれはしない。対面授業の時間は、週1回と限られているものの自律的学習者を育てるための貴重な時間である。授業内でどのようなタスクをどのように課して学ばせ、それを次の学びにどのように紡いで行くか、授業内でのトレーニングと授業外でのトレーニングをどのように橋渡しし、次の授業、次の学期、次の学年へとどのようにリレーして行くかを考えるのも教師の役割であろう。本カリキュラムは、今年度5年目を迎えた。1年次に多少なりとも英語習得に対する意識や学習方法を変えられたとしても、またそれが授業を受けている期間に継続されたとしても、英語科目を離れた途端にリセットされてしまうようであっては持続性に欠ける。わずか週1回の授業で身につけられることは限られているが、授業を離れた時にこそ発揮できる学習意欲を培えてこそ、授業時間に意味があるのではないだろうか。教師の指導を離れても学生が自ら抵抗感の軽減に向かって継続しようとしていける力は、どうすれば養うことができるのかを、これからも追究していかなくてはならない。参考文献Jenkins,J.(2000).ThePhonologyofEnglishasanInternationalLanguage.Oxford:Oxford.5-23.Low,E.(2015).PronunciationforEnglishasanInternationalLanguage,NewYork:Routledge,128-167.OguriS.,AllenD.P.,KatoT.(2017)."WeavingLearningOpportunities:ChangingTeacherRolesinBlendedLearning"TheAppliedLinguisticsConference,TheAppliedLinguisticsAssociationofNewZealand.小栗成子,高丸尚教,D.P.Allen,加藤鉄生(2017).「英語ブレンディッドラーニングの実践と英語学習への意欲向上-理系学科における取り組みを一例に」中部大学教育研究No.17,127-137.中部大学.―49―ATRCALLBRIXがもたらすもの図9リスニング力に影響を与えたもの(2年生)人(複数回答)

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