中部大学教育研究18
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て理想的なのだろうか。そのように万能な英語力を充分身につけるには、まず授業時間が不足している。しかし、英語専攻や文系学科でない限り、複数回の時間割を英語授業に当てることは難しい。本カリキュラムでは「英語でコミュニケーションする」ための力の形成を目標としている。そのためには何が最重要で何を優先すべきか、何を継続すべきかを検討し、1年次の英語達成目標を次の5点の緩やかな開始としている。①心理的バリアの軽減:英語への抵抗感や嫌悪感の緩和と英語学習への再挑戦②未開発能力の育成:リスニングの基礎力育成とコミュニケーション能力素地の育成③学習基盤の形成:擬似初心者レベルからの脱出④自己調整能力の育成:いかなる領域での学習にも通じる主体的な学習能力の形成⑤異文化受容力・適応力の育成:異文化間コミュニケーションに必要とされる人間力の形成2年次の達成目標には、上記の継続に次の2点を加えている。⑥言語観の育成:科目としての語学を越え、自己実現力の一助となる自身の母語や英語を含む外国語に対して視野を広げる。⑦自律的学習者の育成:授業外、単位取得後において必要な語学力を習得しようとする意欲を育てる。2.2学年ごとの積み上げ式フォーカス本カリキュラムでは、1~2年次を基礎力形成期間とし、3年次に必須科目(1単位)でCLIL(ContentandLanguageIntegratedLearning/内容言語統合学習)を置いている。CLILは、1~2年次に培った素地を専門領域の英語に近づけて行く試みである。図1は、本カリキュラムの1~3年生各学年での英語教育におけるフォーカスを表している。1~2年次はコミュニケーションのための素地づくりの期間であり、特に否定感や挫折感からの立ち直りや英語を主体的に身につけ使おうとする動機づけの重要な時間だといえる。カリキュラム全体の中で最重要なのは、初年次に何を教育し、どのような力の形成を開始・継続して行くかである。1年次にこそ英語に対する嫌悪感や抵抗感を緩和させ、英語学習に対して希望を持ち直すような授業工夫が必要である。1年次に培う語彙力や文法力、英語を受け止めようとする姿勢、英語を自分も使ってみようとする力の形成は、それに続く学年での英語カリキュラムの基盤となる。開始年度から今年度まで、1年次には『WorldLink』(ThirdEdition,CengageLearning:LevelIntro/Level1)を、2年次には『WorldEnglish』(SecondEdition,CengageLearning:LevelIntro/Level1/Level2)を用いているが、選定理由には次の要素が含まれる。①テキストレベルごとに語彙レベル(使用頻度順)、語彙数がコントロールされ、テキスト全体を通してリサイクルされている②テキストレベルごとに文法ターゲットがコントロールされており、後続の学習にリサイクルされている③語彙・文法を実際に応用したコミュニケーションアクティビティを構成しやすい素材が含まれている④語彙学習・文法学習に用いられている例文、リスニング・スピーキング・リーディング・ライティングの場面設定やトピック・内容をきっかけに異文化への関心を高めることができる―42―中部大学教育研究No.18(2018)図1ER学科英語カリキュラム学年ごとの学習フォーカス

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