中部大学教育研究18
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1はじめに2014年度、本学にロボット理工学科(以下、ER学科)が新設された。入学者が将来専門分野に携わっていくには、世界の様々な英語使用者と意見・情報交換、相互理解できる英語コミュニケーション能力が不可欠となってきている。こうした時代に活躍できる人材養成をめざして、ER学科は語学教育センターと共に1年次から3年次までの英語強化カリキュラムを構築している。工業高校出身者も含まれるER学科学生の英語力は、入学時点では概ね英検準2級から5級という格差がある。一概にコミュニケーションと言っても、文字によるコミュニケーション、音声によるコミュニケーションがあり、またコミュニケーション場面も目的も多様である。ER学科が試みている英語カリキュラムでは、何をどの程度、どのような順に教育実践していけば英語学習に抵抗感や絶望感が強い学生層にも英語コミュニケーション力の基盤となる力を少しでも身につけさせることが叶うのか、週1回の授業の質をいかに向上できるかを模索している。2英語強化カリキュラム概要2.1カリキュラムの目標「英語でコミュニケーションする」とは、もはや「話せる」ことのみを意味しない時代となっている。グローバル時代におけるコミュニケーションでは、Webやメール、SNSなどを介して瞬時に世界を飛び交う大量の書記言語を読んで理解したり、多様な母語の影響を受けた英語を使う世界中の英語話者の英語(WorldEnglishes)を受容し、内容を理解した上で、適切なレスポンスを書記言語でタイムリーに返したりすることが求められる。日本の英語教育が文法訳読式を中心としていた時代からコミュニケーション志向へとシフトした当初よりも、今日の社会では口頭言語と書記言語の両方を受信、発信する力が求められている。いくら自動翻訳技術が進化しようとも、自動翻訳された語彙選択や語順が正しいのか否かも全く判断がつかない言語レベルでは自動翻訳に頼ることが危険だとも言える。大学での英語カリキュラムを策定しようとする時、どこに照準を合わせれば良いのだろうか。英語の基礎力をつけると同時に、入学時の英語レベルを問わず学業や職業で使えるようになるといった実践力を身につけさせることを入学者全員に期待することは、はたし―41―ATRCALLBRIXがもたらすもの-英語音声に対する抵抗感の軽減をめざした試み-小栗成子*1・高丸尚教*2・デイビッドP.アレン*3・加藤鉄生*4要旨英語でのコミュニケーション能力の向上をめざそうとした時、その前提となるのは発信された英語を聞いたり読んだりして受けたメッセージ内容を理解できる力である。次に必要となるのは、その内容に応じてレスポンスをする発信力である。英語を苦手とする学生が7割以上を占め、英語授業に対する絶望感を早くは小学校時代から感じ続けて来た理系学科の学生を対象に、週1回90分のみの授業を通して英語学習への動機付けをし直し、英語でコミュニケーション力を培うことは果たして可能なのであろうか。本稿は1つの理系学科での取り組みを例として、英語音声に対する抵抗感の軽減を目標に対面授業とe-Learning教材「ATRCALLBRIX」をブレンドしている具体的な方法、対面授業における発音指導の目的や教授法と2017年度の意識調査結果について報告するものである。キーワード英語習得、学習意欲、発音、ブレンディッドラーニング、教師の役割*1人間力創成総合教育センター語学教育プログラム(英語Ⅱ)教授*2工学部ロボット理工学科教授*3人間力創成総合教育センター語学教育プログラム(英語Ⅱ)講師*4人間力創成総合教育センター語学教育プログラム(英語Ⅱ)助手

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