中部大学教育研究18
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よる口頭発表の実践を行っている。授業の進め方は、前半の授業(敬語・文法)に関しては、テキストに沿って説明し練習問題をその場で行い解答解説をしていく方法が基本である。後半の「書くこと」では「文章を書く際のルール」「説明文を書く」「意見文を書く」を経験し、受講したほとんどの学生が最終的には800字程度の小論文を自力で書けるようになっている。また「話すこと」でも、担当教員が「スピーチ」「ディベート」のいずれかをクラス状況に合わせて選択し学生に実施させることで、少なくとも一度は人前に出てきちんと自分の考えを話す経験を積ませている。2.5小テスト日本語検定は年2回、6月中旬と11月中旬頃に実施される。授業で扱わない4領域については、検定までに網羅できるように小テストの計画を立てた。小テストは、授業の初めの約5分間で行っている。こうすることで、学生が時間通り授業に来ることを促す効果も狙っている。特に1・2時限目開講の場合、遅刻をすると小テストが受けられず必然的に学期末の成績に影響することになるため、学生には注意を促している。2.6成績評価第2回から第6回までの内容を問う復習テスト20点、書くこと20点、話すこと20点、小テスト40点の配点で評価している。その他100点満点の別枠で、日本語検定の合格による加点(3級認定で10点、3級準認定で5点)がある。出席不良者の対応については、第5回の授業が終わった時点で授業担当者から報告してもらい、学科ごとにまとめて各学科主任に連絡している。これは「日本語スキルA」が卒業要件となっている学科に対してのみ行っており、出席状況の悪い学生の情報提供という意味合いが強いが、可能な範囲での指導もお願いしている。学科主任から学生の状況説明のフィードバックがあったり、即座に指導が入って翌週から該当学生の出席状況がよくなったりした例が相当数ある。2.7履修・単位取得状況表2に「日本語スキルA」の年ごとの受講者数、不認定者数、不認定率を掲げる。単位不認定者は、開講当初は低かったものの、4年目にやや上昇した。こうした状況を踏まえ、打ち合わせで各担当教員に履修・単位取得状況の報告を行い、また年2回開催する講師の意見交換会(3月下旬、9月中旬)で、情報の共有、復習テストなど教材の情報交換を積極的に行い、相互によりよい授業の形を模索している。こういった取り組みの成果もあり、ここ数年は不認定者の数が減少している。表2年度別受講者・不認定者数・不認定率2.8再履修・未履修クラス開講先述したが、「日本語スキル」は工学部・経営情報学部・応用生物学部・国際関係学部・人文学部コミュニケーション学科では、卒業要件となっている。そのため、単位不認定となった学生の再履修クラスが必要となる。また、卒業要件ではなくとも、日本語能力を高める目的で「日本語スキルA」の受講を希望する者もいる。そのために再履修・未履修クラスを複数設置している。工学部、経営情報学部、応用生物学部の3学部では「日本語スキルA」が春学期に割り当てられているため、この授業は春学期に開講数が多くなり、秋学期は開講数が少ない。そのバランスを取って、2011年度から2013年度までは秋学期に限り5クラス開講していたが、2016年度から学内ニーズに合わせ、春学期にも2クラスではあるが再履修・未履修クラスを設置した。どのクラスも多くの受講者が集まり、学内でもニーズのある授業といえるだろう。2.9授業内容を共通化するための取り組み「はじめに」で述べた通り、「日本語スキルA」は全クラスがほぼ同内容の授業である。そのためシラバス、教科書・小テスト用教材は同一のものとし、評価方法も統一している。ただし、7週目に実施する2週目から6週目の授業内容を確認する復習テストは各学科・クラスの特性も考慮に入れて各教員で作成することとしている。以上のように基本的には授業内容の共通化を図っているが、このような形式的な統一だけでは共通した授業は保証できない。そこで先述した担当者全員の定期的な意見交換会や、折に触れての情報交換(授業方法や学生対応など)によって調整を行うようにしている。―29―「日本語スキルA」の実践報告

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