中部大学教育研究18
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に必要な日本語の運用能力すべてを身に付けることは難しい。大学4年間にわたり、その学生に関わるあらゆる教員がそれぞれの立場で努力を行わなくてはならないであろう。「日本語スキルA」ではその「土台作り」を目指し、この3本の柱に焦点を当て半期の授業を行っている。開講当初より変更することなく、学生に必要な基礎としての定着を図っている。2.2日本語検定との関連「特定非営利活動法人日本語検定委員会」主催の日本語検定は年2回開催され、本学も準会場として、2011年の「日本語スキルA」開設以来、学生の日本語の知識と運用能力を確認するために検定試験を実施してきた。日本語検定は「敬語」「文法」「語彙」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6領域から出題される。しかし、3つの柱を定めた「日本語スキルA」の授業の中でその全てを扱うのは難しい。そこで、言語学的な理論が込み入った領域であり、学生の自学自習が難しい「敬語」「文法」の2領域のみ授業で扱うことにした。また、日本語検定の有無に拘らず、この2領域は社会人として生活する上で必要とされることは明らかであり、学生の要求度も高いものであろうと考えた。また、残りの4領域については、「語彙」「漢字」など記憶に頼る要素の強い領域であるため、毎時間小テストを行って知識の定着を図ることとした。学生は小テスト用のテキストとして日本語検定委員会監修『社会人のための日本語トレーニング』(エデュケーショナルネットワーク)を購入し、毎回指定された小テストの範囲を自学自習する。具体的な学習計画については2.4で述べる。2.3教科書の作成「日本語スキルA」で学ぶ内容を全クラスである程度統一するためにオリジナルの教科書『日本語スキル』(中部大学日本語スキル研究会著、学術図書出版社刊)を毎年加筆・修正し、出版してきた。また、開講7年目の2017年度に大幅な内容の修正を行った『新版日本語スキル』を刊行し、より現在の中部大学生に合わせた内容へと変更した。この教科書は各章が1回分の授業の内容に相当するように編集し、巻末には日本語検定3級の問題(1回分)と提出用の原稿用紙・課題シートなどを付けている。この教科書と、前掲した小テスト用のテキスト『社会人のための日本語トレーニング』の2冊を全クラスで共通使用している。2.4授業計画と主な内容表1に2018年度の授業計画・小テスト実施範囲を掲げる。学期の前半で「日本語の基礎知識(検定対策)」を扱い「敬語」「文法」を言語学的な理論に基づき解説している。後半には「書くこと」「話すこと」を扱い、「文章を書く際のルール」の確認、「説明文」「意見文」の執筆、「スピーチ」または「ディベート」に―28―中部大学教育研究No.18(2018)表1「日本語スキルA」授業計画

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