中部大学教育研究18
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巻頭言高等教育における教育研究の位置づけ日本では高等教育について、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(中教審答申、2018年11月)」が出され、必要とされる人材、学修者本位の教育への転換が謳われています。再生という言葉が使われるほど、いま深刻な教育問題に直面しているといえるでしょう。国外でも、ヨーロッパでは欧州高等教育圏の形成による教育改革が進行しており、アメリカでも、入学選抜の見直しなど、改革が進んでいます。ここで、学校教育法制定(1947年)後の高等教育機関の変遷を見ておきましょう。1970年代末には、日本の社会の活力には初等・中等・高等教育の充実が大きな力を発揮してきました。しかし、1990年代に顕著になった少子高齢化は、人口ボーナス(bonus)社会から、人口オーナス(onus,重荷)社会への移行で、深刻な社会問題を引き起こしたのです。高等教育機関における学生増加によって、本来ならさらなる社会の活力増が起こるはずが、教育そのものに弊害が出てきているのです。初等・中等教育の中の教育のあり方にまで影響して、生徒の学ぶ喜びが失われていったといえます。高等教育機関では、個人の才能を見出し育て、学び問う学問の場が、単なる中等教育の学び習う学習の延長となり、学びの質の変化すら求めにくくなっているようです。中部大学では、高等教育に関する研究成果、教育に関する分析研究、実践報告を広く学内外に知らせるために、2001年に『中部大学教育研究(JournalofChubuUniversityEducation)』を創刊し、発行してきました。この間、大学教育の理念・手法・改善策などを論じ合う場を提供し、大学教育における改善・質的向上に役立ってきたといえるでしょう。教員・職員・学生個人の中に生まれつき持っている個性や才能を引き出すことができる教育環境を整え、共に学び、学び続ける場を作り出していきたいと考えています。『中部大学教育研究』は、実践を通したこれからの高等教育のあり方を考える、議論の場としてこれからも重要な役割を担っていきたいと願うところです。2018年12月中部大学長石原修年状況大学(在籍者数、国立・公立・私立)短大(在籍者数)進学率1950201校(22万人、国70・公26・私105)149校(1.5万人)1956大学設置基準228校(55万人、国72・公33・私123)268校(8万人)10%1976計画的整備423校(179万人、国83・公33・私307)511校(36万人)39%1991大学設置基準の大綱化514校(221万人、国97・公39・私378)592校(50万人)38%2002学校教育法改正686校(279万人、国99・公75・私512)541校(27万人)49%2018782校(291万人、国86・公93・私603)331校(12万人)57%文部科学省(文部省)『学校基本調査報告書』各年度より抄出

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