中部大学教育研究17
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図1平成24年版臨床工学技士国家試験出題基準(一部抜粋)2.2国家試験対策の取り組み(模擬試験)国家試験のための対策は、専任教員が中心となり、本学科4年次の学生を対象に実施している。具体的には、授業とは別に、国家試験と同一の出題範囲、出題数かつ試験時間で実施する全国統一模擬試験(一般社団法人日本臨床工学技士教育施設協議会主催・年3回実施)および学内模擬試験(本学科で準備する試験/平成28年度は9回実施)を受験させている。また、試験後には正答・解説を配布するとともに、採点結果を学生へメール配信している。このメールには、各問題の正誤や得点のみならず、学内正解率と難易度、科目別の点数と正解率、「あなたが取り組むべき問題」「あなたが苦手としている科目」「あなたが得意としている科目」、度数分布表、合計得点推移表も記載されている(図2)。このメールは全学生の採点結果をまとめたExcelファイルから、ExcelVBAを用いて学生毎のファイルを作成し、その後にPythonを用いて当該学生のExcelファイルのみを添付して送信している。なお、メール送信に関する一連の作業は、本学科の専任教員が行っている。これらのことで、学生自身に実力を認識させるとともに、教員も学生の実力に応じて必要時に面談等を密に実施し、国家試験に合格できるようフォローする体制を取っている。2.3国家試験対策の取り組み(e-learning)国家試験のための対策は、繰り返し学習することが必要とされており、過去の試験問題の反復が学習内容の理解を深めるといった報告がされている2)。実際に、様々な医療職種の国家試験対策として、e-learningシステム(以下、e-learning)が検討されている2-6)。本研究では、以前から取り組まれてきた模擬試験に加え、新たに臨床工学技士国家試験対策のためのe-learningを構築・運用した。その構築方法および運用結果について報告する。3e-learningの構築と運用方法3.1構築するe-learningの概要医療系教育研究で構築されているe-learningはパソコンでの使用に限定されていることが多いが、本研究で構築したe-learningはモバイル端末(スマートフォン、タブレット)にも対応させた。これは、「電車などでの移動時間」や「紙媒体での勉強の合間」等も、効率的な自主学習の時間に変えさせる狙いがある。また、出題する問題として、過去7年間(平成21~27年)の国家試験の試験問題を使用した。出題方法は国家試験と同じ五肢択一とし、選択肢は自動的にシャッフルして出題されるようにした。これは、五肢択一の問題の場合には、選択肢を暗記してしまっている学生がいるためである。作成したコンテンツは、「科目別問題集」と「90問全問出題」(午前、午後別)とした。科目別問題集を作成したのは、苦手科目の問題を繰り返して解くことで、その科目を克服させる狙いと共に、「電車などでの移動時間」や「紙媒体での勉強の合間」等といった短時間でも完結することができる問題数のコンテンツも用意したかったためである。また、作成した全てのコンテンツでは、スコア管理機能を使用した。これは、構築に使用した市販のクイズ・テスト作成ソフト(ロゴスウェア株式会社:THiNQMaker)の機能であり、学習管理システム(LMS:LearningManagementSystem)を構築することなく、コンテンツ使用者の利用履歴を把握できる機能である。具体的には「誰が」「どのコンテンツを」「いつ使用し」「その成績がどうであったか」を把握することができる。3.2e-learningの構築方法本研究で構築したe-learningは、国家試験の過去の試験問題と正答および解説を電子化し、THiNQMakerを用いて、Webサーバーへアップロードに適したコンテンツデータに加工して作成した。また、作成したコンテンツデータをパソコンから閲覧する時にはFlash形式で、モバイル端末から閲覧する時にはHTML5形式で表示できるようにした(図3、4)。なお、本システムの使用を本学科の学生のみに限定するため、Webサーバーにアクセス制限をかけた。3.3e-learning利用状況の調査方法e-learningの利用状況は、THiNQMakerのスコア管理機能から得られたデータから検討した。なお、―84―中部大学教育研究No.17(2017)

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